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夏待ち、曇天
膨張した曇天 電線に支えられて寝そべり 無言でざわめきを隠している 町を白象紙に押し込めてここが世界だって顔 影は灰色、日向も灰色 色彩が眠たげに淡くて 行き場のない熱が校庭にうずくまってる 少年たちは平穏に飽いていた 崩壊の予兆に胸を高鳴らせていた 汗ばんだ長袖の制服 白が重苦しい ネクタイが息苦しい 彼らの唇は乾いていた 分厚い風が吹いて 木々が緩慢な曲線で揺れる 青葉はそわそわ震えている ツツジが二輪、アスファルトにうっぷして 残ったピンクがクスクス揺れる 団地から赤ん坊の叫び 夢心地を切り裂く激情の表現 青が、迫っていた 新しい戦争の青 砂っぽい大気と行進 ビー玉の信仰の青 懐郷がトラックに乗っている 青は遠く寂しい憧れ まだ空は重く眠たい 自販機でサイダーを買って 冷蔵庫に入れた
夏待ち、曇天 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 937.5
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-05-01
コメント日時 2018-05-31
項目 | 全期間(2024/12/27現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
最後の2行以外、「夏待ち、曇天」の曇天感が顕れているような気がして好きです。 最後の2行が来るまで、どことなく1940年代のようなイメージを膨らませてしまったので(多分、「戦争」の語の影響で)、最後で少しつんのめってしまいました。
0おはようございます。 わたしは つい先日から鉛筆によるデッサンをはじめたばかりだからなのか この詩の絵心のようなものを 思いました。白象紙が解らなかったのですが、 画用紙の一種なんですね。 パラパラ漫画にできそうなぐらいに絵が浮かび上がってきます。 色彩が、ピンクと青だけなので 鉛筆画で書かれたパラパラ漫画に 印象的にピンクと青だけがはいっているような感じが想像できます。 自販機でサイダーを買って 冷蔵庫に入れたで終わっているので回転させて絵を繰り返し投影できるタイプのパラパラ漫画を想像しました。 つまり、この話手は サイダーを飲んでない。それは作品中の人々にのませようとしている感じがしました。 なんか いいです。 好きな作品でした。
0こんばんは。最後の二行で、清涼感がひろがりました。重く湿っぽい灰色をはじきとばす爽やかなサイダー。おいしそうです。
0〈電線に支えられて〉寝そべっているのは、曇天それ自体、なのでしょうね。 さらに言えば、曇天そのもの、に同化している、語り手の心。 中途半端な白さに、全てが塗り籠められているような、開放感があるのに閉塞感も感じさせる「鬱屈」、若い肉体が抱え込んでいる、解放したいのに、解放できないエナジーのようなもの、それを〈行き場のない熱が校庭にうずくまってる〉と捉える感覚に惹かれました。 〈平穏に飽いて〉いる少年たち。青葉の緑(そわそわと落ち着きがない)と、どこか余裕をもって(くすくす笑っている)ツツジのピンクの対比は、恋(青嵐)の予感に揺れる少年と、見つめられる(見染められる)ことを、どこか楽しんでいるような少女(もしくは、もう少し年上の女性)の暗喩のようにも読めて、面白かったです。 〈赤ん坊の叫び〉からの進行が、いささか急ぎ過ぎているようにも感じられました。 平穏を破る赤ん坊の声が意味するものは、なにか。恋の先にある、種族を繋いでいくという、現実の重み、生活の重み、なのだろうか・・・単純に、鋭い、不安な音(声)が響いて、場面が転換される、気持ちが切り替えられる、という情況を描きたかったのか。 青、が迫って来るというのは、こうした鬱屈した心情を暗示する曇天を追いやる青空であると同時に、青春を謳歌してやる!という気概、のようなものを表したかった、ということか・・・。「戦争」は、青春の荒れ狂う心情を予感した比喩でしょうか。 サイダーの爽やかに弾ける感じ、みずみずしい若さのイメージを最後に持ってきたところで、なんとなく作品が「収まった」感覚もありますが・・・ 「赤ん坊」の声が響く直前までの連が、とても繊細かつ独自の視点で「現在」の心境を捉えているように思われるのですが、「赤ん坊」以降、言い難い心情を一気に言い表そうとして、焦ってしまったというのか、少し乱暴な処理になっているような感覚も抱きました。後半をもう少し練り直すと、とても良い作品になるような気がします。
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