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誕生日
「私も誰かに必要とされたい…貴方の口座に200万円振り込みます」 なんて馬鹿でかい釣り針の迷惑メールに今更騙されやしないけれど その釣り針をまじまじと眺めてみたら なんだ 私とそっくりじゃんね 12月には悪魔が出るって皆知らないでしょう? 土日に魔力を高めて 平日は労働で清められる そんなサラリーマンな悪魔がさ 毎年お馴染みのそいつも今では一緒にご飯を食べるほど仲良くなっちゃって お前がいないと冬が始まらないよ、 なんて嘘も甚だしい冗談を言うと その黒焦げは満足そうに含羞んで つやつやの白米を頬張った 実際はそんなのお得意の妄想で 乾燥の酷い伽藍堂の1K6畳の部屋には 私という人間存在が一粒ぽつん、 尾崎放哉みたいな顔してベッドで横になっている でもホントは石川啄木の方が好きなのは秘密 だって掌をじっと見たところで何にもない 何にもないんだもの 踏み場もないほど散らかった埃っぽい床の上に丸太みたいに転げ落ちて 跳ね上がった前髪を振り乱して下手くそなダンスを1人で踊ってみる 格好のつかない寝ぐせはこの城では立派なドレスコード 裸足で立つフローリングは結露で濡れたガラス窓の気配と同じくらい冷たくって 骨の芯まで冷えきって足の指の可動はままならなくなる ああやっぱり服は床に散らばせておくのが1番だ とかなんとか またくだらない嘘を、無意味な嘘を、自分に吐く 裾を引きずる重ったるい遮光カーテンの隙間から向かいのマンションの窓が見える 明るい子供の笑い声、ツリーのてっぺんのお星さまみたい 今私がマッチ棒を擦ったなら あのオレンジ色の灯りの向こうにある景色が映し出されるのかな 電車でもスーパーでも歩道橋の上でも 甘酸っぱい蜜柑の優しい香りがそこらかしこに漂っているから 私は風邪のふりをして 鼻を摘んで俯いて冬空の下を足早に歩く 小さい頃白ひげのおじさんがくれたウサギのぬいぐるみが 毛羽立ってぐちゃぐちゃの毛布に埋もれている 「貴女がピンク色で目がクリクリしたふわふわのぬいぐるみがいいっていうからおもちゃ屋を何軒を巡ったのよ」 種明かしの母の言葉は ポッケの中で丸くなっている夕方のホッカイロの温度を含んでいる 一緒になって街を放浪した疲れ顔の桃色ウサギは 今ではもう目が半分しか開かないけれど 春が来たら良い匂いの洗剤できっと洗ってあげるからね コンビニで買った1リットルパックの薄い緑茶で 花の名前みたいな小さいピアノみたいな名前の薬をつっかえながら飲み込む ハッピーバースデートゥーミー 惨敗だ 365日前に始めたドリルの答え合わせで今年も悔し涙を流す 書き込んだはずのページは何枚めくっても 真っ白 真っ白 真っ白 書き込みを雑に消されて ボロボロの表紙は大きくバッテンされて 積み上げてきた筈の問いの答えは もう、わからなくなっちゃった 思い入れのある365日分の厚みが ぐいぐいと後ろ髪を引っ張ってくる だけど、それはもう、終わったものだから 息を止めてゴミ箱に思い切りぶち込んでやるんだ でもね私、何度だって新しい問題集を買うよ 問一から解くよ 200万円を見ず知らずの誰かの口座に振り込まないためにね
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誕生日 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 465.7
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2025-01-01
コメント日時 2025-01-11
項目 | 全期間(2025/01/18現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
しかし、何でも切れる刀だ... 職場のバイトの娘が話してくれた色恋武勇伝が、 なかなかパンチが効いていたので 「君はSEX MACHINEだね」とJB的賛辞を贈ったつもりが 「何それヒドくないですか」 とキレられる、ジェネレーションギャップ... この、ポエムマシーン感つーのか 環royの「ハッピーバースデー」もかくやという、 フロウに戦慄しましたね。 もうこの路線では誰も砂柳さんに勝てないんで、 Bレビの詩学ハードコア一派は全員、 独学で学べ己を知れ、自分を見ろ!
1うまいんだよね、もう完璧でしょ。詩集だしてください。買います(^o^)丿
1おまるたろうさん いつもコメントありがとうございます。 刀のような、ちっさい果物ナイフを良質な砥石で仕上げていきたいものです。 ポエムマシーンと呼ばれるとなんだか恥ずかしいですね。 12月という、寒くて、暗くて、陰鬱で、でも街はアホみたいにキラキラしてて、 ゴーゴー焚かれる暖房で喉が渇く虚しい月に酔っぱらったみたいな 1年後に見たら赤面してしまうようなものを書いてしまいました。 因みに私の誕生日は本当に12月なんですよ。 3か月に1回くらいは酔っぱらったモノを書きたいな。
1AOIさん なんだかいつも、衝動的に言葉を書いてしまい 詩の様式がバラバラであっちこっち行ってしまって これでいいのかなあ…どうなのかなあ…なんてグズグズしているので こんな風に言って頂けると、これでいいのかも、なんて 地面をちゃんと踏ん張れる気がします。 まだまだ研鑽を重ねて参ります。いつもありがとうございます。
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