休憩中にふと彼女を思い出す
簡単なスパゲティでさえ、作るのに失敗してしまうからだろうか
軟体動物たちに纏わりつかれたこのぼろ店で、
卵の眼を落としてしまってから、
黄身と白身が本当に多くなってしまった
「栗いる?」と裏口をたたく少年に、
「間に合ってるよ」と返す日々
明るい夜空の裏に、使い古された調味料が隠されているから、
私の心臓はどうにか香りを立たせられている
朝日のような、賞味期限つきの妄言ばかり出るけれども、
眠ると自然に生まれてくる閃光に、
かつての親切を静かにしまっておきたい
いちごを取ろうと背伸びしていた君
だんだん、枝葉に絡まっていく
私は、信号機から垂れるケチャップ、マスタードに海を空目して、
あの停留所に迷い込む
毛がジョリジョリするマルチーズの犬小屋と、
バッシュの履いた雌牛の広告看板が見える、
あの停留所
コロッケのにおいが今もする
雲の弱火が、青空をこんがり焼くその時まで、
君のことを待っていた
窓際で、ミキサーのように走り回る少年を見ながら、
君に似た君が味のしないコーヒーを啜っている
記憶の焦げるにおいが香ってくるまで、
私はひとまず休憩することにする
作品データ
コメント数 : 12
P V 数 : 633.2
お気に入り数: 0
投票数 : 5
ポイント数 : 0
作成日時 2024-11-12
コメント日時 2024-11-15
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) |
叙情性 | 0 |
前衛性 | 0 |
可読性 | 0 |
エンタメ | 0 |
技巧 | 0 |
音韻 | 0 |
構成 | 0 |
総合ポイント | 0 |
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閲覧指数:633.2
2024/11/21 21時10分24秒現在
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生活はいつも仄かな香りを漂わせている気がします。必ずしも美味しそうでなくても、脳裏に焼き付いてしまう程にそれぞれが強烈で忘れられない。記憶に付けられたタグのような。乱立する生活の中の像や色彩(ケチャップとマスタードの信号機だなんて、なんとも可愛らしいこと!)とその香りが、リンクしながら読み手の鼻をかすめてゆく、そんな温かな詩だと感じました。
1君のことを思ってるんですよね。いろんなことがありながらセンタメンタルに書かずにこの楽しい感じが一周回ってセンチメンタルな感じがよかったです。言葉と言葉のつながりから、何か私の揺るがない強さみたいなものを感じました。
1レストランの店長(?)が、休憩中にふと見た白日夢みたいな詩だと思いました。 文中出てくる「君」と、最後の方の「君に似た君」との関係も気になります。 タイトル通り、すべてのものが料理に関連づけられていて圧巻でした。
1紅井さんがコメントされているように、これは料理と見せかけた言葉の調理方法ですね。言葉を表現によって調理していこう、という彼女との待ち合わせ時刻までの妄想空間。 いわゆる技法的な表現方法として代表的に位置づけられている比喩表現の中にも「暗(隠喩」から「換喩」と「直喩」から「提喩」などもあり、またおなじような表現方法として慣用句があったり擬人化されたりと、考えてみれば普段我々はその多くを意識しないで使っていたりするものです。このテクストを基に個人的に様々な解釈から表現された意味を汲み取り扱われていくこともできるのです。 毛がジョリジョリのマルチーズの犬小屋とはトリマーを要したペットサロンでしょうか? バッシュの履いた雌牛とは全米プロバスケットチームのシカゴブルズの広告? そのような賑やかな街で停留所で彼女と待ち合わせ。停留所?イタ飯屋かな?ちょっとわからない。 しかし自他ともにシュールリアリストを認める熊倉ミハイ氏。ミハイル、ミサイル。いや、ごめんなさい。毎回楽しむように味なことを仕掛けてきて読み手を苦しめてくれます。いや、愉しませてくれますね。 今回の作品はご本人の意思とはほとんど感激もなく動機はテクストに置かれて読めてきます。つまり、 二度~三度、考えながら意味を汲み取り読んでいけば!あ、そうか、と理解できる仕組みの創作にこしらえてある。ということですね。 ~雲の弱火が青空をこんがり焼くその時まで~ どうぞ陽がおちるまで待ち惚けしてください。 御飯した後は実際お楽しみのランデブーが場所を変えて待っているのでしょうから…
1コメントありがとうございます。 今思い返すと、嗅覚、書いている時は全く感じないなあと。言葉から香るものを少し粗末に扱ってたかもしれません。 嗅覚の効果も意識的に、使いこなしていこうと思います。(無意識だからこそ面白く濫用できている、という可能性もありますが) ありがとうございます。
1コメントありがとうございます。 一周回ってセンチメンタル。そうですね。時間が経ちすぎて、悲しいことは消えていき、どうでもいいことだけを思い出しているようです。停留所の先のシーンは、空白の行でぶち当たったのでしょうか。ひとまず早く焦げてほしいですね、お客さんも待ってるので。
0コメントありがとうございます。 今気づきましたが、「黄身」もいますね。同一人物かもしれません。
0一読して爽やかな印象を受けますが、ところどころ不穏さが漂っているようなないような…そーゆーものがスパイスとして効いているのだなーと思ってみたり…深読みせんで素直に字面追って楽しんで(楽しんでっちゅうのも語弊がありますが)拝読しました。ありがとうございました。票入れちゃいまーす。
1コメントありがとうございます。 これはもう使い古されている言葉遊びかもしれないので、何を試しているのかというと どう言えば良いか分からないので造語で、「ラングメトニミー」と呼べるでしょうか。つまり、隣接、はしてないかもですが他言語のニューロンを刺激する換喩を置いていました。 フランス語で雌牛はvache(バッシュ)。フランス語のjoliは「かわいい」なのに、日本語で「ジョリジョリ」と繰り返すと、何だか変な気分です。触れてないところだと、ドイツ語のEiは「アイ」と読むのに「卵」の意味。面白いなあと。 まだ初心者で、簡単な言葉たちですが、他言語間の韻を踏みながらもシュルレアリスム的イメージを描き出そうとした感じです。
0コメントありがとうございます。 無駄に不穏にする場合と、本当に不穏にさせる場合があります。 前者は照れ隠しでしょう。後者は渾身の皮肉ですね。 楽しんでくださり、嬉しいです。
0少年に彼女の面影を見てる、感覚を受け入れる。事故、待ち合わせ停留所、夕暮れまで君を待っていた。殻にこもっている、堕胎、卵黄と卵白ではないから固まっている或いは生きてない。などざっと読んでそうなのでは?と思えるところをざっと書き拾っていくわけだけど。 まあクラーい感じに読解してしまうのは私の性分ですが。 日常に合わせているので不明なとここそ引き立ちます、その配分が絶妙なんでしょう、まあ意味を解くものではないけどきちんと意味を置かれていると見えました、これも。
1コメントありがとうございます。 「堕胎、卵黄と卵白ではないから固まっている或いは生きてない。」 これは盲点でした。自分もAOIさんのその読みに染まりそう…納得してしまいました。 前々から、意味を置くことの実験みたいなのをしていますが、要は読み取れる意味を分かりやすく置いて、それを読めたとしても矛盾や、解けない表現が余っている、ということを突き詰めたいですね。「よく分からなかった」と「分かった気がする」という混濁した読後感を、当分続けていくと思います。 ただそのためには、ストレートな作品や超現実な作品といった極端なものもちょこちょこ、境界線を見失わないために書いていきますが。メインはこういう作風になるんでしょうかね…そんな考えも、ダダの否定精神にいつ通り魔されるかは分かりませんが。
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