獲物を窺う一匹の強大なひょう
地表に覆い被さった腹に
固く鋭い毛が一本一本
つららのように逆立つ
毛の根本が針のような銀白色を反射する
喉奥に響く唸り声が
触れる大気を振動させ
海底から
荒波を手繰り上げ
地表の生き物は身を寄せ合う
ひょうの目がギラッと地に向けられ
誰か 男の子の悲鳴
ぐわあっと開かれた大口
赤黒い喉仏
雷光!
ピシャッと空気の薄膜が引き裂かれ
轟き、響き、
音が、
波を超過し、
直線が飛び散る
空気を物凄い圧と、速度で、
叩きつけ、
次から、次から、
空気の破壊、破裂、破、破、破、、、
ひょうを取り巻く音風の旋回
ふう、
とひょうが目を瞑る
水粒子の振動がぴたと止まり
一気に大量の雨粒が地表に突き落ちる
滝、滝、滝、、、
上空100キロメートルもの粒子が降り注ぐ
安らぎ
ひょうが
たまった水にぴちゃぴちゃと舌を浸す
気管でひゅーひゅーと渦巻く大気
ざらついた舌と生温かい吐息
巨体が地表をなでるようにして
のっそりと足を踏み出す
四肢の隙間から漏れ出す太陽光線が
じりじりと毛を燃やす
ひょうが歩んで行く
作品データ
コメント数 : 6
P V 数 : 610.0
お気に入り数: 0
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ポイント数 : 0
作成日時 2024-07-06
コメント日時 2024-07-09
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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2024/11/21 22時23分43秒現在
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ああ、ひょうだな――と ひょうがふった、そのいめーじでしょうか。すごくかっこよくかかれています。 いいね
1コメントありがとうございます。 わあ、かっこいいですか、嬉しく思います。
1ひょうってこんなに獰猛で凄い生き物だったのか!
1ひょうについてここまで書けるのはすごいですね。それが比喩にしても比喩じゃないにしても、普段と違う世界が見えてきます。
1ヒョウを取り巻く音風の旋回に、圧倒的な大スコール。水を舐める場面が印象的で、「安らぎ」に意味が充填されていると思いました。
1なんかさ、アニメから飛び出してきた巨大なひょう(豹)もイメージできますが、 これが近代合理主義が齎した人間の理性を絶対視する思考。技術革新で自然を支配できる。正常/異常の区別をも無効にできる、と勘違いした人間たち。そのことが、今日のようにハルマゲドンを起こす核という兵器をも獲得したわけです。 そのような危険性を仏18世紀、あの百科全書編纂で有名な啓蒙思想家のディドロは「怪物的思考」として予感していた。 「アウシュビッツ以後、詩を書くことは野蛮である」啓蒙の弁証法。同じく哲学者のアドルノは有名な一文を遺していますね。 この「ひょう」がまさに豹変する怪物であるならば、それはいまウクライナに降り注ぐ超音速ミサイルでありハルマゲドンを眼にすることになる水爆なのです。 果たして筆者はそこまで深く掘り下げているのだろうか。という疑問はちらほらですが、いずれにしても怪物的思考のひょう(豹/雹)であることには違いないのでしょう。
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