彼らは未だ俺たちが欲する世界を作れずにいるんだ
2023年の始まりの日のことだった
前年の12月ロシアによるウクライナ・バフムトへの攻撃が激しさを増していた
サンタクロースが俺の家の裏庭から入って
物資を調達しようとしていた
彼は言った
㈶サンタクロース協会の調達部のものだ
世界の子供たちが困っている
動くな手を挙げろ!
経済のバランス調節機能がうまく働いていないんだ
そう言って黒いサンタ帽の中年の男は
マグナム銃の銃口を俺に向け
『金目のものは全部出せ!』と言った
ケータイで誰かと電話している
『ルフィ』と名乗る電話口の向こうの男は
"抵抗したらヤっても構わない”と黒いサンタ帽の男に言っていた
俺は屠畜前の豚のように背筋に戦慄が走った
あるいはパウロの啓示のようなものだったのかもしれない
確かに聖者に現れる聖痕が俺にもあった
サンタクロースといっても所為 盗賊の亜種だ
白いズタ袋の中身はもれなく盗品であふれ闇の経済で回っているんだ
それはあるいは戦争のようなものなのかもしれない
ビーンというかんだかい音がして
橇を引いていたトナカイたちの耳がピンと立つ
俺は廻し蹴りをサンタクロースの顎にヒットさせ
後ろ手に彼を組み伏した
巨大な世界を敵に回すということはこういうことだ
あるいはその奇妙な世界のしくみの一端に
サンタクロースも居たのかもしれない
サンタは赤がかっていた彼らもマルクス主義者の一群に過ぎず
『ルフィ』さえ
闘争が新たな段階に入ったことを示すものに過ぎなかった
2023年の元旦
俺は猫を抱いて掘りごたつに入り
一人と一匹でおせちをつついていた
ウクライナでの戦争を映すテレビを観ながら
レンコンをモグモグする
パーティーは始まったばかりだ世界は終わりはしない
俺もまだ始まりの合図を今聞いたばかりなのさ
作品データ
コメント数 : 8
P V 数 : 1437.6
お気に入り数: 1
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作成日時 2023-05-09
コメント日時 2023-05-24
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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2024/11/21 22時28分24秒現在
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戦争が始まった頃に戦争関連の詩が投稿されるたびに嫌悪感があった。その投稿作品群は賛否に関係なくディープラーニング(洗脳)の結果の域を出ていなくて。それと比べたらこの作品は新しい。今出してくるところが新しいし、まだ始まっていない未来が読後感としてある。未来も世界も戦争もつまるところ自分の食い物が美味いかどうかだろう。
0最後の一連で世界線がズレたような感覚が楽しかったです^ ^
0結局、自分たちが生きていく世界が、ロボットや人工知能が絡んで、社会の概念もかわってしまうのか もしれないけれど、よくならないといけない。というのが前提にあるけれど、そういう前提に立てない ひとたちが沢山でてきて、分断、というか淘汰が起こるのかもしれない。意識という脳内の現象として それは起こる。そういう本質には科学的知では触れられないので、詩文学などの役割はある。これから の若い人たちの問題が、ポエジーによって全然ふれられていないの。ここの作品群には。 将来に起こるであろう事柄の本質に、迫ろうとする意識がどれくらいあるだろうか?という疑問があるな。
1ぼくはもう、自分の問題を解決してしまったので、あんまり詩を書く必要性が 自分の内部の問題としてなくなってしまったのだけれど、沙一さんたちは、多分 内面にも社会にも、違和や錯誤を抱えていて。多分、それらが創作のモチベーシ ョンになっている筈で、ビーレビ界隈も盛り上がってほしいもんだと思います。
0書きはじめるのは簡単だけれど最後はいつも難しい。着地がみつかると 初めて、自分の書きたかったことのイメージが腑に落ちる。ちゃんと高 ぶらないことには、落とすこともできないしね。詩を書くことは体に悪 い。神経を端まで使った気になるから。生活のバランスを通して書くイ メージだ。魂とか見えない細部だとか、そういうものが大事。
2いつもの尾田さんの作品だと感じました、イカさんと同じ感想になっちゃうけど。しかしリスペクト値は最大を示しています。 文学の本来持つ力と言うか 政治や経済、倫理などの指針を担える力強さを感じますね。 俺は昔からのヘンドリックおたくなのでヘンドリックの登場を期待したけど今回は登板がなかったみたいですね、今月のお題で熊のヘンドリック使わせて貰おうかな 五老星
0このお話にでてくるサンタクロースは割と好きです。芯が通っていると感じます。 個人的に怖いのは、スーパーの店員やケーキ屋、その他、商売してる人が、クリスマスシーズンにサンタクロースの格好してることです。無料じゃないのなら、サンタの服は着るべきではないと思うからです。
0もう少しコメントを書きたくなった。2016年の夏の終わりにネット詩に参加した私が体感したそのネット詩にある反逆さの残りかすを作者はおそらくは絶望感と個人的なやるせなさで現在まで眺めていた、そう僕は思うしこの作者がネット詩にどう落とし前をつけるのか、それしか、この作者の作品にはみていなくて、その観点からすれば今作では満足出来ない。作品単体における表現はそれはそれで良くも悪くもあるだろう。身体をまるめたその背中に吹きつける強風はこの作者へ、世界とまだ向き合えとサタンが誘っている。
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