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古代そして意識の地層は
かつて光は無名の風としてあり 瞬時が歌であるような 里山の花房につつまれていた ある日、まれびとが 粗末な藁束2本を小舟に載せて 夢枕に立った この舟は海の心臓からできているのです さあ、恐れず乗りなさい 私のなかに堆積した意識の地層 発芽を待つ種子は灰の湿りを帯び 宇宙の深淵が心に射し込んで 滅び去った星の光芒に揺蕩っていた夜だった 舟は雲の波間を流離いながら 無名の風に吹かれて進んだ 海の血液は名づけられる度に汚れ しきたりは切り花のように萎れていった 無明の館の戸を叩き おとづれの声を聴くのです 七夕・盂蘭盆・八朔と過ぎ 時じくの香の木の実を採りに行つた人びとは 帰って来ない いつしか私もその一群に溶けこんで まれびとの影だけが人を蔽っていた 動植物たちのかすかな息づかいが聞こえる ここはどこだ 旧街道をまっすぐ南下する甲殻類 胞衣に絡まる無表情な粘菌 茅屋の奥には森があり 石状化した無意識が点々と落ちている 賽の河原のように拾い集めては壊す 祓ひ給へ 同胞の 病葉の 禊 給へ 惨き夢の 契り給へ 銀も金も如何に況むや 耳鳴りの沢 奉りたる地蔵 黙契の滴る垂迹を思う 白根葵が群生している 根と花の間には ながい時間を埋め込んだ記憶があり 導管をつたう蒼い悲鳴が聞こえる そのしろい一輪をいま祈りながら手折る 切り花にするためではなく 風習を下る寒い唇に あなたのあかい唇を刻印するため
古代そして意識の地層は ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1103.7
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-11-27
コメント日時 2017-12-10
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
6連 「時じくの香の木の実を採りに行つた人びとは 帰って来ない」 「人々は」と「帰って」の間が随分空いてますが、これはコピペミスで、一舛空けです。 折口信夫を想起しながら、お読みいただけるとありがたいです。
0これブンゴクラジオで読んでたやつですよねきっと あのときは言葉のリズムが良いなあと思っていて でも記述されたものとしてもすごくいいですね というのも喋る言葉っていうのはどんどん流れていっちゃうので こう読んでるとその流れを恣意的にできるから自分のなかでも追っていきやすい 作品として品格と迫力みたいなものを感じました ただ朗読のときには思わなかった感想なんですけど ほんとに正直な感想なんですけど ちょっと長いなと思いました それは二回目だったからかもわかんないですけど そして僕が朗読のほうをさきにきいてしまったかもわからないです そしたら僕ががんがん勝手なことを言ってることもありえます すいませんでも100%熟練の方なので正直に感想かいてみました
0コーリャさん あ、文極ラジオで読んだのは拙詩「花の化石」でした。(詩集『死水晶』に収録) まあ、同じ作者ですから似ている箇所はあったかも知れません。 この詩は私の近作ですが、今までで一番難解な作品かも知れません。 だから、長く感じてしまうのも仕方ないかと(笑 でも、感想をいただき嬉しいです。 下手をすると全くコメが付かないかと思ってましたからw
0仲程さん いつもご感想をありがとうございます。 重厚なシンフォニー!!これは作者としては嬉しい言葉です。 折原信夫は古代に帰れといいましたが、現代社会にあって共同体やいろいろなしきたり、祖霊、 こういったものが失われつつあります。 それを自己の内奥の深層心理と照らせ合わせ、詩的に書いたものです。 お題目、後で検索してみます^^ ありがとうございました。
0拍動に乗り流れ行くままに たどりついた島にうずもれ 私は静かに根をのばした 喉の奥を洗われるたび、苦さに嗚咽し腹を震わせ 軋みながら爪を剥がしながら 根を伸ばすことだけはやめなかった 岩盤を突き抜けたとき 地上の私は崩れ去った 既に朽ちて肌はささくれ 粘菌と地衣類がぬめりを抱き込む ひた、ひた、ひた・・・ 大地の底から近づいてくる足音がする したたる水の迎え入れる速度で 穿ち抜いた空洞に潮の苦味を覚え思いだし想い返し 喉の奥を洗った渋く辛い粘質のうしおの 細かくひび割れた根の先に焼いた針の鋭さで染みてくる苦さを それは私が呼び込んだものに相違ないのではあったが・・・ ひた、ひた、ひた、 空虚が塩の味で押し寄せる 朽ちてなお 私は根を伸ばし続ける
0この詩にインスパイアされた詩でしょうか。 素敵です!! まりもさんは、オノマトペの使い方、うまいですねー。 「ひた、ひた、ひた」はよくあるパターンですが 挿入する場所が効果的!
0白島さんの「大き目の作品」(すみません、荘厳とか形容すればよいのでしょうが。。。)ではいつも極寒のような厳しさを読後感として感じます。「肉体の創世記」もそうでした。例えば、今作の「宇宙の深淵」という言葉ひとつを読んでも、そこに想像するのは「極寒の厳しさ」です。それはもしかしたら、白島さんの人物像というバイアスがかかってしまっているのかもしれません。そこで、是非、私自身の向学の為、御教示いただれば嬉しいのですが、白島さんは「作品」とその「作者」については、どのようにお考えなのでしょうか。よくネット詩では「作品だけをみて読むべきであって作者の人物像は無関係」という趣旨の話を聞きますが。
0三浦果実さん 私の詩の定義は叫びと祈りがあり、生と死を見つめる眼差しが必須だということです。そのようなスタンスで詩を書いています。(それ以外は詩ではないという意味でなく、あくまで私のスタンス) そういう意味で作品に「白島」というバイアスがかかっているのではなく、同じような死や叫び、祈りを反復されるからではないでしょうか?それは良く言えば、作風ができている、悪く言えば、一種のパターン化ともいえ、長短こもごもなのかも知れません。 「宇宙の深淵」・・・・この詩句だけ読み返してみると陳腐な表現ですが、 宇宙の深淵が心に射し込んで 滅び去った星の光芒に揺蕩っていた夜だった このフレーズは実感で、書いています。 「宇宙の深淵」という文節をフレーズによって生かしたいと考えた箇所でした。 (ご質問の内容とはそれていると思いますが、改めて感じたので記しておきます) >作品だけをみて読むべきであって作者の人物像は無関係 これは、もう自明の理であって、その通りでしょう。 とは言っても、有名、無名を問わず、その作者のおかれた環境や時代、病みや闇の深さ、などを知ったことで作中の言葉が思わぬ衝撃を与えてくれることは往々にしてあります。難解と思われた詩が、意外とすらすらか解読されるケースもあります。 ただ、それはあくまで補助的要素であって、必須のものではないと思います。 詩を解読できることは、逆に詩のひろがりを自ら阻害してしまうので、 分からないなりにその詩に酔える状態が理想ですね。
0白島さん 丁寧にお答えいただきましてありがとうございます。ずっとモヤモヤしていた作品と作者の関係との向き合い方・捉え方について、とても勉強になりました。勉強不足な私だけのことかもしれませんが、当掲示板に参加される皆さん、特に「詩作品の読み」について深めたい気持ちを持っていらっしゃる方々にも参考になるコメントだと思います。感謝致します。また、白島さんがもう一つ仰られています「詩を解読できることは、逆に詩のひろがりを自ら阻害してしまうので、分からないなりにその詩に酔える状態が理想」ということ。分からないことは分からないこととして理解保留のままに「感じとる」ことが最も大事なことであり、詩を読む行為に決まりごとは無いということをこれからの掲示板投稿作品と向き合う際の心掛けとして大切にさせていただきます。 白島さん、今後ともよろしくお願い申し上げます。
0誰の無意識の底にも潜んでいる昔の恐ろしくかなしい儀式、を詩に起こしたような。 まれびと(僧侶? 外国人? 口にできない身分の人? あるいは神仏のかたちをした流木?)はどこからきてどこへゆくのだろう。 恵みをもたらしたのか災いをもたらしたのか、あるいは災いを起こし鎮める儀式をしたあとに恵みをもたたしたのか。 なんだかとてもなつかしい感じがしました。 私の中の無数のおくわたちが喜んでいる、ような気さえする、という妄想がムクムクわくのでした。 すごいなァ!!
0もたらした~ だった・・・・・・すみません~汗汗
0三浦果実 さん 丁寧なお返事、ありがとうございます。 ビーレビの新企画、期待しております。 田中修子さん そう、自分なりに無意識の層を覗いてみました。 【まれびと、マレビト(稀人・客人)は、時を定めて他界から来訪する霊的もしくは神の本質的存在を定義する折口学の用語。 折口信夫の思想体系を考える上でもっとも重要な鍵概念の一つであり、日本人の信仰・他界観念を探るための手がかりとして民俗学上重視される。】 まあ、こんな事は知らなくても一向に構いませんし、 それでも修子さんのように感覚的に分かってくれるので嬉しい。 修子さんの妄想を刺激したなら、この作品は成功と言えそうです^^ いつもコメ、感謝でっす!!
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