独裁者の統治する海辺の町の
熱病のごとくに造営された城砦だらけの
雨上がりの石畳の坂路で
党大会において原始共産制の存在を否定した
小便くさい哲学者がこの世から抹殺された
太陽の黒点がいやにはっきり見えた埠頭の先端で
少女は右の眼帯を不器用に外すと
俺から義眼をうけとりながら
キリギリスを一匹処刑してきたと
満足げに報告した
護岸工事が放棄されたままの中途半端な岸辺には波が
いく頭もの疾駆する馬の白いたてがみとなって打ちつけていた
俺は少女を引き寄せ
いつものように尿と潮の薫る肉体を快楽で労った
我々は蟻でなければならない
一人一人が革命という義のために組織化された
かけがえのない高度な虫ケラなのだ
彼女は愛人でもある書記長のこのドグマに
いかれていた
坂路の死体はいつものように別の組織の蟻がどこかへ運ぶ
音楽もダンスもパーティもワインも知らない蟻の忠誠心と行動力はどこから来るのか
先の哲学者によれば
造られた歴史によって創られたらしい それが
本当すぎる真実だったがために彼はキリギリスのレッテルを貼られ
この世から消された
墓はおろか 経歴も住所も係累も名前も残らない
奇しくも彼自身が言ってたっけ
書かれてないものは存在しないと
あの前日の夜
そう 正確には十時四十五分だった
書記長は
俺たちふたりを波止場の倉庫に呼びつけ
運命は真夏に決まるというテーゼを授けた
それは実に陳腐な激励の仕方ではあったが、
確かに暗殺が夜空の星のように美しく思えたのは間違いなかった
サングラスをかけた俺が女を餌に無二の親友を
午後二時きっかりに坂路に呼び出し
隻眼の最愛の妹が女に化けて兄を正面から刺した
俺は坂の下で転がってきた少女の義眼を拾いながら
快楽を知った蟻二匹
今度は間違いなくどちらかの抹殺命令がどちらかに降るだろうと
確信していた
(反歌)
蟻と蟻うなづきあひて何か事ありげに奔る西へ東へ 橘曙覧
作品データ
コメント数 : 2
P V 数 : 637.3
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ポイント数 : 0
作成日時 2022-09-04
コメント日時 2022-09-05
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 0 | 0 |
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可読性 | 0 | 0 |
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技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
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2024/11/21 22時57分58秒現在
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その通りです。毎回、見事に(書いた本人以上にという意味です)解釈していただき、投稿したかいがあります。ありがとうございます。 蟻は義眼の少女とサングラスの俺。自分がそうだと気づいたら、あの小便臭い哲学者やサングラスの外れかけた俺のようにキリギリス認定になって、抹殺されるわけです。「神のプログラム」ってイカしますね。もちろん現代ではファシズムやマルクスレーニン主義ですね。ちなみにぼくは、マルクスはすきなんですが、レーニンはちょっといやで、スターリンや毛沢東よなると憎悪の標的です。「神のプログラム」かぁ。今現在のわれわれを支配統治している「それ」ってなんでしょうね。詩が3つくらいできそうです。もちろんこのことばはパクりませんよ。でも義眼少女の匕首のように隠してかくつもり満々です。・・・理解者あらわれて舞い上がる薄楽より
0その通りです。毎回、見事に(書いた本人以上にという意味です)解釈していただき、投稿したかいがあります。ありがとうございます。 蟻は義眼の少女とサングラスの俺。自分がそうだと気づいたら、あの小便臭い哲学者やサングラスの外れかけた俺のようにキリギリス認定になって、抹殺されるわけです。「神のプログラム」ってイカしますね。もちろん現代ではファシズムやマルクスレーニン主義ですね。ちなみにぼくは、マルクスはすきなんですが、レーニンはちょっといやで、スターリンや毛沢東よなると憎悪の標的です。「神のプログラム」かぁ。今現在のわれわれを支配統治している「それ」ってなんでしょうね。詩が3つくらいできそうです。もちろんこのことばはパクりませんよ。でも義眼少女の匕首のように隠してかくつもり満々です。・・・理解者あらわれて舞い上がる薄楽より
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