骨董。たとう紙
ちいさくひかる無数の燐、
むねいっぱいの芳春と川を獲る 疎開地へ
朝餉のほど縊る、
人目ごまかし、
あちこち故郷に散る、おしなべて
物の凹凸
広い野原の中央に、静かに又は遠く
落ち着いていきます
列を作って対ぶ 白く泡立つ波が
特に等しい関係で、差し支ゑず
混乱した状態を抑え込んでいる
片方の腕、虚しいかぎりのヲ嬢サン。
樺色の破れ裂ける絶望には
廃盤の螺旋を銀鱗で落とし
穏やかで温かく
多く頭上に放擲する優れた誉れとしては
密か約束を犯す、乳清を嗅ぐ
氷点下の列車は納戸から別けて
心耳を澄ます 不文律を賭け占めし
くちびるからほどけていく
まろやかな琴線を幾日 数えたかトドメを。
「ワタシは」水が染み込むよう、
入相に阿吽を鎮める「こころとからだ」
少女虹彩
ひとつかいがらが埋葬されています
母のように、いつか凪ぐために
――このみちが海の底で、あることを問う
ときの鼓動を聴いて
その場限りの感嘆が ひゅるとつきぬけて
やっと私の声は耳に届きました
虚ろな老人は夕雲の子とみて
平をそっと開け放てば手籠から逃げたあぶくが
ぽつぽつと雫を降らせるので、
これは、魂の落としものです。
出鱈目な嬌声が溢れては
かみの維が破れただけと
蜘蛛のこととして授けられましょう
雑然とした開放感に 驚いたときに綿埃が
ひかりに溶けることを知った
あなたは南天の姿と想い、
季節の移り変わりに ゆきに見舞われ
私は庭の木偶の坊と化し、
唯移り行く奇跡に庇われては
空き家を黙って護っておりました
床下から逃げ出した灰色のネズミが
幸運を奪うときに
己だけを、おいていったのでしょう
彼女が軒下にすんと風鈴をぶら下げているのを
闇は 見た
いっそう色濃く足元に縮こまる中(あたり)にあり
キミは浮いた実を
かのように砕かれ、
私は時々に描かれていきます
それが発芽し、開いたざわめきに目を奪われ
再び新らたな子を呼び込むものでしょう
正午障子では、影も形もない
いまに『わたしを』伝えられない
おんなは右のアナタの上に常にあるので。
青雲
その日の斜陽を靴跡に踏み躙らせ
よそよそしい未来をこびりつかせ、
ヤマは遺骸を縦ニ 三杯に摩り下ろした。
それで、
一に、赤裸々を口に銜えた<鑪と平和>
なかほどに廻り初めた 紙風車を転写し、境界線を質す
ニへ滾ル、カルメラほどのロに流し込む、麻をひいては
胸を臙脂に開かせる 千鳥格子の 目論見を
解れた結び目をかわかすようにと
河原に向けていきます。
綺麗に溶媒された無花果や渋柿などを
垣間見せるはうけぐちの、吹けば飛ぶよな墨流し
秋の空として頬張るあなた方の 枯れてなお
紅葉が 夢枕と貫き徹す キミやボクと、言った。
慎みのない生き様を
見ず知らずの人生を、
滑翔
カーテンの波間には素肌の得意げなキミの
振りまいた泡沫の陽炎が織り込まれている
右頬から愛し合って薬指から零れていく星星が
、輪になって おくるみに沈んでいる
便りない、まっさらな風に乗る、紙飛行機はどこまで
言いようのない出会いを、口ずさむのか
偶然を盗り合って あのモデルはどこへ向かうの
高飛車なチンクシャ猫が 黄ばんだ駒のひとつを無くした
「悲痛な叫びで紡いだ言葉も簡単に捥がれて
あなたに庇われるように無惨にも口封じさ。」
なぎさのうえを、走り回る未来が
なみうちぎわで、弾けて消えた
灯台から流布される、うたごえはかすかに
「切り刻まれてしまうね。愛してるの呪縛によって、」
『何処まで行っても平行線の抱擁を口伝してさ』
ハミングするような
瀬戸際の、満ち欠けを浮かべている、
母なる海に、暈けて 墜ちた。尖ったほころびが、
ひるがえった翼へ。
篝火
いつも行くはずの近道は薄明を終えて神社の鳥居の脇を吹き抜ける
平坦な午後に並ぶ学生たちが少しのやすみを記憶するとき
みちゆきは確かに真新しいスーツを纏い 大きめの制服を着て
まばゆいほどキイロイ廂をかぶって。交差点を塞いでいる
皆同じ顔のへのへのもへじ
覚えきれないほど長たらしいタイトルをつけて
人生を書き込まれたバッドエンド
どうせ死んじまうのに バイパスは渋滞していた
それでもまだ信号で止まったわたしを誘導するように、
ゆっくりと歩き出す、坂道を転がるような まあるい石ころは
背を押されて とまることをわすれてしまった
紛れもなく過去のワタシと それにあたって鮮血を流した女を見た
ちょっとした弾みで脱輪した者は
ちょっとした襞に絡まり緩んだたわみに惹かれていく
酷く愉快な話
野菊は乱れ オモチャの兵隊は散らばる
夕餉の残り香が一線 狼煙のような
カラフルな葬列にちかづくように
壇上の大団円 肥太った雪解けは近そうにあった
明るめのアーケードから、
とろけるあかりと影に溜まるホコリばかりの
塗り固められた今日という光を生かすだけの生彩処置
遠回りの雪洞を抜けると、ゆらめくだけの ほのお
たわわ
おろしたての極点と銀の手は仮のものと氾濫する。
丘の小股をすくい、山なりの隆起を飛び越して、
うねりもたおらかな、てっぺんを砂上とする。
秘められた悪辣な改竄を行う眺望の地に
合掌する沿岸に 足が不自由な 雉の 感度が増し、
皮肉っぽいコマネズミの書窓を 聞きかじる。
慈雨と
彩雲を楽天地に
残り香を
口車に乗る天気図を。
寂滅した愛嬌を深みにかぶせる、波音はののしり
人生を 引き締める思惑は 葉擦れ。
『それとなく水を向けるわたしは木の股から生まれた理由(わけ)じゃない』
湖心された型に嵌っている。舗道の剥離 水際立つ夢路への いちまい。
/情熱的神がいる場所を強いれる軍人、
挙句の果て熱っぽく血の気がひく無恥、
進む速さを傾ける煩悩、
三日開けずにやってくる綿花、
爪に火を点す自問自答。息が弾む。
泣くに泣けない陰茎、鵜呑みにせよ。/
母のやさしさから。<不慮>
色彩は豊かな。埒もない老骨、
またたく間。暗に言う、突出した強さ、これが
(あなたへの、壱文。)
作品データ
コメント数 : 4
P V 数 : 872.7
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2022-09-01
コメント日時 2022-09-03
#現代詩
#縦書き
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2024/11/21 23時00分48秒現在
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文語、口語混じり、「朝餉のほど縊る、」など縊るですか。「列を作って対ぶ」の対ぶは読み方すら分からずお手上げなのですが、縊(くび)ると言う読みと意味は分かっても、フレーズ全体として何を言わんとしているのかと言うとちょっと立ち止まらざるを得ない。 「ヲ嬢サン」という表記は歴史的仮名遣いを意識したのかもしれません。「氷点下の列車」と言うフレーズではシベリア鉄道を想起するのですが、この詩の中ではどうもそうではなさそうです。「かみの維」は恐らく復元と言うのも可笑しいですが、繊維の事だと思うのですがちょっと自信がありません。それと物や背景が人格を持って居る様な感じを持ったのですが、闇が言ったり、紙飛行機が口遊んだりなどの箇所からです。詩としての重力が感じられる詩だと思いました。
0この解体品は6篇の詩から成り立っています。多くご指摘をいただきました『骨董。たとう紙』ですがこれは、タイトルにあるように骨董としてほつほつと文字として置かれただけのものです。これは時代や形、人や物の思いとあるのです。それは側面でも欠片でもほつれでも、どこをどうとっても真実のすがたはわからないもので。それを「ワタシ」は水が染み込むよう。「こころとからだ」に鎮めるわけですが、読めない言葉わからない文あり得ない視界、そういったものはあくまで『思いで』からしか、真の姿を表わすことしかありませんから、その未完成な部分もすべて含めてその後に続く詩に対してのいわばギャラリー的な意味合いを置いて辿るように導きます。すべては見えるわけもなく正しく書かれるわけでもありません。ですからアナタの中で芽生えることがなかっただけだともいえますし、わたしのものが単に拙いだけとも言えます。答えはつねに読者様が持つものだと思っていますので、わからないことにばかりひっかかってしまい、それ以上のなにも引き出せなかったそのことを毎度残念に感じていますが、ただ単にワタシのものが突飛すぎるのだとはわかっていますので、そういう現実をしっかりと見せてもらえるありがたい場所としてこのビーレビを楽しんでいます。詩としての重力が感じられるいうお言葉が、ありがたくおもいます。
0手ごわい。
0なにが手ごわいのか一言ではわかりかねますが、コメントありがとうございます。
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