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墓参り
台風の過ぎ去った翌日、夕焼けと共に駆け抜ける、ほんのりと秋を孕んだ風の中に、いつかの君の気配を感じてしまった。まばゆいばかりに輝く夕日にも温められない素肌。何事もなかったかのように日々を過ごしている私。今日の夕飯にと買い込んだ脂ぎった食事を妙に後ろめたく感じてしまう。一生懸命、私は生きているのだろうか。ビニール袋越しに滴る缶ビールの汗が太腿に垂れて、わたしははっとする。もう何も感じない。子どもの頃に感じていた季節の匂いをもう感じなくなったように。擦りむいた膝を見ても悲しくなくなったように。他人の目ばかり気にしなくなったように。君の気配を、もう感じられなくなった。 今年は墓参りにいこう、と思った。
墓参り ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1015.6
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 5
作成日時 2022-08-22
コメント日時 2022-08-25
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 4 | 4 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 5 | 5 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0.5 | 0.5 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2.5 | 2.5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
序盤は物凄く平易で凡庸な印象を受けました。ですが「今日の夕飯に」以降からガラリと印象が変わる。淡い恋心の回顧から、墓参りに行くという発想にたどり着くのが、何とも言えず絶妙。墓参り。人の死を感じる、想いを至らせる瞬間というのはこういうタイミングなのかもしれません。
0いいですね。思春期の感受性を忘れてしまった悲しさ。日常生活に埋没する焦り。それが墓参りに集約する。
0「ビニール袋越しに滴る缶ビールの汗が太腿に垂れて、」 こう言う感受性がいいですね。散文的な体裁をとっていますが、実際は詩なのだと思います、この作品のセンテンスの内実は。
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