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8月という名のまばゆさ
複数の足音を携えて強く抱きしめ去ってゆく。 8月は刹那。 8月は眩しすぎて目を細めてしまう。結果、私たちは大事なものを見落としている。激烈な視野狭窄が鮮やかさを作り出し8月を生んだ。まるで晴れの日以外存在しないような気ままさで。 この狭さ、小ささ、ひそやかさ、拍動を、 若ければ、青春、と、呼べたのだろうに。 取りこぼした、は、ち、が、つ、を、両手で掬う行為は、 太陽と例えていた向日葵が、実のところ、太陽ではなく、太陽をひたすら見上げた私自身であったと気づくに近い。 美しい人が自分は醜いと嘆くとき、その嘆きは、醜い私の嘆きとなんら変わりはないのだった。 若いとは言えなくなったこの年で、もう一度8月を生きなおすとき、私はまばゆさでいっぱいの眼をいっそ閉じてみて、蛍に触れる手付きで、指先を揺らめかせる。 花のように。 そうして8月は夜を迎える。 8月とは人生の一瞬であること。肉体とは私の一部であること。怒りのなかに慈しみがあること。嘲りのなかに優しさがあり、愛のなかに冷酷さのあること。あなた、と、わたし、の境に、あなたでもわたしでもあり、どちらのものにもならない空間のあること。 ぬばたまの闇夜にてアスファルトに染み付いた炎が燃え上がっている。 沈黙した8月の亡霊たちが 我が身体に宿り あらしがくる 塩に荒らされた、ひび割れた皮膚から 漏れ出でたあかるさに焼かれ 私はくらい目をした老婆となる。
8月という名のまばゆさ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 846.9
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ポイント数 : 0
作成日時 2022-08-17
コメント日時 2022-08-26
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
老婆になる感覚、解ります。一つの自己防衛なんですよね。私はそうでした。今でもそういう気持ちはありますが、結局のところ、生涯青春、とじいさんが新聞に投書するように、そうあった方が賢いというか、健康で損をしない、強さがあると思います。なかなか弱いですけど。夏を惜しむ切なさ、反語としての蛍、思い当たる節、でも、同じような気持ちを感じる人がたくさんいる、と知った時、ああ、人間は本当は孤独をもう少し逃れられるのではないか、と私は気づきたいです。でも詩にはよよよ、と嘆きを描くかもしれない。( ´艸`)良い夏を。
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