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夜光虫
1. 己が蒼白の示す 渺眇たる沈殿、 その無謬に、 波のあわいで 震える夜光虫よ。 汝らがそがひに、 かの不滅は来たるぞ。 かはいかなるものの 業により象られ得たか。 2. このいと暗き夜に、 寂寥に震へるか弱き 光を編みつつゆく、 汝ら、魂を言祝ぐもの。 あわいにて微睡み給へ。 あゝ、古の貝に眠りし 旋律が、我をかいいだき、 あやしつける……。 3. 天を妬み、傲慢なる大洋の、 双翼の限りに、その蒼、 損なわれぬ美に、我が魂を 波間の煉獄に、連れ去るもの、 天のいと高きとき、潜むは何処。
夜光虫 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 885.1
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-11-14
コメント日時 2017-11-18
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
びょうびょう、むびゅう、と響きが連なっていく。字形の固さや古語の奏でるクラシックなイメージ。 業によりかたどられた、という設定が、重厚な印象を残します。 夜光虫の光を印象に残す一連目。夜光虫の光の質感を〈寂寥に震へる〉と喩え、それは〈魂を言祝ぐもの〉と転換し、そこから〈古の貝〉に眠る旋律、に想念を滑らせていく・・・までの流れは、とても繊細に描かれていると思いました。三連目、急に天や大洋といった大きな景に場面転換したり、煉獄という大きな空間が〈波間〉に置かれたりする。 手元の小景から遠くの大きな景への転換、これは俳句や漢詩の短詩などで用いられる手法ではありますが、1、2連で粘り強く夜光虫の光や海辺の景を辿ってきているので、飛躍の幅に差があり過ぎるような気もします。
0誰もコメントされないようなので、ライトレスします。 ブログでは36作中、「霧中にて」他、数編は拝読してますが なかなか技巧的で相当の書き手さんだなという印象でした。 お若い方のようなのに、このような古典的、且つ重厚な作品を書かれるとは 意外や意外。手がかりを求めて検索して辿りついたのが以下。 【ルシフェラーゼ (luciferase) とは、発光バクテリアやホタルなどの生物発光において、発光物質が光を放つ化学反応を触媒する作用を持つ酵素の総称である。 発光酵素 とも呼ばれる。】 【そしてルシフェラーゼの語源は、かの堕天使の名でもある、ルシファーだとききます。 3.はこのスペイン詩人の言葉(ロルカ)を用いることとしました。 夜光虫、そして揺れる光と心に茫洋と顕れる海、その不安と深さ、それらが伝われば幸いであります。】 と、あります。 この前置きがあって、初めてこの難解な詩の語るところが、うっすら見えてきます。 つまり、堕天使ルシファーは元々はキリストに次ぐほどの高い位にあった天使だったわけですが、 それが人間に対して全権を持とうとしたばかりに地に堕とされ、堕天使(悪魔)となってしまった。 我々の中には必ず正邪の感情が潜みます。ルシファーの見えざる黒い手が伸びてきます。 そしてルシファーが奪おうとした自由意志があります。 ある意味、多分に宗教的な詩でもあるわけですが、 その堕ちた者の悲哀を、海に光る夜光虫のイメージを主軸にして描いた作品なのでしょう。
0すれ違いで、まりもさんがレスを入れておられました。 しかし、内容は西洋キリスト的、文体はどこか漢詩的、翻訳詩的。 マニアックを好む者には面白いと言えば、面白いのですが、 なかなか受け入れにくい作品かもしれません。
0まりもさん 2連目の「あゝ」からが第三連目の流れで、「あやしつける」夜光虫の輝きに惹きつけられる「わたし」が、ルシファーの系譜である夜光虫の輝きと、それが去った太陽(神)が天頂を頂く昼の海に想いを馳せる、という内容でした。しかし一連二連と三連目の時間的に描写的な飛躍があったことも事実でした。 ありがとございます。
0白鳥さん レスと評価ありがとうございます。やはり前置きは載せておいたほうが良かったですね……。 夜光虫の青白き輝きが波間に散りばむ夜、海には不安と高揚が満ち、また大地と天はキリスト教における主神の領域ですから、この二点から海はそこから失墜したルシファーの領域だと考えました。それゆえ波間のルシフェリンは煉獄の炎でした。その輝きに惹きつけられた「わたし」が、主神のもっとも支配領域の広い正午に、波に揺られながら夜の海を思い出す。そこに、ルシファーへの恐怖と不安と、そして危うさの景色を思い出す……といったところです。翻訳詩的なのは、ロルカが海をルシファーの翼と見立てたことも、夜光虫と同じだけこの詩の中核を成しているから、です。 ありがとうございます。
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