こわれものでもなかった
なつかしいひびでもなかった
唯水底に漂う叩きつける雫の聲にぬかづく
夏 雲 奇 峰
熒惑星を薄群青の
きみのひとみで僕も殺して
生成りの砂地に帰(かえ)す、
そっと未来をここに降ろし
眩むほど静謐な睡蓮を
こいあい(濃藍)の夜空とらくにのぼり
木漏れ日も焦れる素肌も
摺り寄せればどのみち下垂する
ありふれた情念の深緋がだらり
薄墨の輝きを匂わせて
朝顔と祀りのうたは
勝色の平行線をただしゃかりきに臨み
永遠を凪ぐ空蝉と風鈴
昊の軌跡 鸚緑の羽根と想い
夕立に覗く期待と不安を何方も。
今生の彩、にぶいろの霹靂とする
潮騒
清々しい懐星に干されて、
渇いたは夏は盛りを終えた
僅かな酷暑に苛まれ、
鬱ぎ込んだ木立の茂みから
かたびらのワンピースが
麦わら帽子と涸れている
涼し気に飽いた舌先で
蒼を犯しては、
温い虹を睨んだ
ひみずの縁に溶け込むだけの
眼鏡越しのモザイクみたいだ
天華のように蔑んでは、
波打ち際をいったりきたりの
繋いだ手と手も、
あぶくになれない
あのひかりは向日葵と
染(し)まうばかりの
See you soon
生臭い風が吹いてくる
透明なミドリは 光を吸い込んだ、廃墟に微睡んでいる。
まっさらだった背中に 弦を引く
ひとつひとつのせせらぎに、舞い降りていくように
やわらかで まっすぐに。
掌中の虫の音を褥に、あらいざらい
山門をひとつひとつ、縫うように、刻んで
野花を口に含んで、銀の煌めきを夢に抱きながら、
弧を描きながら。
嗄れた声を放つ、廃線をただ、奔らせる眼差しの
壊れた幸せは熱を帯びたままで、誘蛾灯に群がる
何処まで行っても、お池の周りを、ぐるぐる して
にごりをおとしたもの、白皙(はくせき)をつくったものは
華やかな尾鰭がまた、まぎれもなく
僕と君との境にあり
ほどけたままで、ういているのを覗き見て
『くるしくないの』と無彩色の君は、目を細めて、言う
flat line
腐食した己から、新たな息吹が返り咲くとも思えないが
記憶に隠蔽する、なきがらを遺棄してみる
吐き出した溜息が何かになるわけもないだろうに
かえりぎわに健気を装う、雑草の図太さに目を留めることが
くだらないかなその種子を 溢れては零している次第です
それではさようなら、よくできました、
日はそれでバツがつき
望遠レンズで覗いた、
口角は心にもない、バーコードを読み漁る
景色に溺れていた、なんてこと、言い出せもしないので
今日もまた今強いた道を繰り返し
歩んでいくだけの未来を覘いた
いきるためにしんで、しんでしまうから、
いきていると比較され
加工して冷蔵庫に生かしている、味覚はとうに噛み殺され
満干の箱庭でぬるま湯に浸かるだけで 苦し紛れて、
月光を掬った
いつかの僕が織り込んだ騙し船が
どうしてか自分を乗り込ませ
筆箱の隅から泳ぎ出した時に、時代は変わったのでしょうか
夢も希望もない、
簡単に棄てられる絵空事を乗り越えているようで
夥しい埃で形作っただけの ひとがたと、あいまみえる。
己の身を振り返るだけの、
輪郭を帯び脅かすだけの、線香花火
さざなみもくそもなく、およぎきれず
ふらふらと煌けるだけの星屑
今の君と出会った、常夜灯のシグナル。
そのもとで、かどで
われら、なんでもないひとすじの、線上に擱いて、征くこと
呼吸
小走りな靴跡と泥を跳ね
飛び石を堅く叩く
落ちかかる日に足を取られ
惹き吊るようにもありました
この雨は
わたしを覆い隠してくれる
やさしいだけの我儘の
楔のような、あとでした。
かつかつとうろつきまわる
そのうちに
地を這うように脈々となり
ひたひたとしみゆくときに
忙しないだけの 醜いものは、
それでいて
梟の様におおらかで、
得体のしれない声を上げ
疲れ切ったひとびとの
合間を縫っても 誰一人
ぬばつむだけのサナトリウム、
浅瀬を波打つものでした
物音ひとつないくせに
かげのごとく偲ばせる
吸いつくだけで
くぐもるばかりの
雀の涙かもわからない
おぼれているのは群衆の
沈んだままの淡いで削げた
からころとさる鳥たちと
夕餉をくぐらす団欒と
伽藍洞にも寄せ返す
代わり映えない光景の
子猫のような黒い影、
急かして廻るまなざしの
ただまばゆくさき夏のひぐらし
作品データ
コメント数 : 3
P V 数 : 1267.7
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 8
作成日時 2022-08-12
コメント日時 2022-08-19
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/12/04現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 4 | 4 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 4 | 4 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 8 | 8 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 4 | 4 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 4 | 4 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 8 | 8 |
閲覧指数:1267.7
2024/12/04 03時40分01秒現在
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あっタイトル?になってしまったみたいです、すいません。?と書き(夏)と読みます。
0コメントも出ないのか(-_-;)上段が風で下段が之の漢字、親字が(夏)です…なんかすいません
0室町礼ありがとうごさいます。これはここ数年で書いたその多量の詩の中から、夏に沿った物を集めて置いたものです。自分でも納得しているものだったので、評価いただきまして非常に嬉しく感謝いたします。
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