横顔にあてた右手の甲には、
花魁の睫毛がしっとりと濡れたまま、
火傷にも似た跡を残している。
男色家は彼女に目さえくれず、
雨の相貌を描いていた。
明日の午前六時頃には、僕らは地球の終わりを目にしつつ、
ボーイフレンドやガールフレンド、あるいは父や母に、
別れの電話をかけていることだろう。
人は苦しくも悲しくもなく、
海の尾ひれを追って、
紺碧の岸辺にまで泳いでいく。
上昇する温度は、奏でた音の数々を、
光沢紙の上で燃やしていく。
華氏212で喪を見るのは、
美貌のみなしご。
貧民窟から抜け出せたのは、
隻眼の絵描きと美女の詩人だけ。
太陽は燃え尽きることを急いでいたのか、燃焼を加速させて、
醜い顔を見せると、僕らが本当のことを言うまで待ってはくれなかった。
明日は最後の日だと言うのに、
僕はタイプする文章を拾い終えると、
新しく呼びかける人を探し始めるのだろう。
波のようにうねる鏡の上で、
揺らめいては消えるのは、
ありがとうもごめんなさいも言わずに、
この世を去っていく肉体の、
強く、強く、濁った血。
作品データ
コメント数 : 3
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作成日時 2022-08-04
コメント日時 2022-08-05
#現代詩
#縦書き
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2024/11/21 22時57分23秒現在
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自殺のプロセスを書いた詩でしょうか。太陽と海が遺書の紙であるかのような錯覚を覚えました。
0ボルカさん、コメントありがとうございます。科学的考察、シミュレーションが詩的な文体になり得ると、ボルカさんのコメントを読んで発見し、改めて驚いています。ネット詩の良いところですね。レスポンスが詩に新たな彩りを与え、奥行きをもたらすという。明日の午前六時は、多分来るべきものとして、永遠に固着してそこに存在するのでしょう。ありがとうございました。
0エイクピアさん、コメントありがとうございます。この詩は地球の終わりを迎えても、逃れられない肉体の性についても書かれたものですが、これが遺書のようにも見えるというのは、全く僕にはなかった視点でした。この詩がもし遺書だとしたら、自賛するわけではないのですが、これほど美しい遺書はないのではないのでしょうか。傍観する一人の人間としてそんなことを思いました。
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