波間の終わり - B-REVIEW
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ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



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波間の終わり    

横顔にあてた右手の甲には、 花魁の睫毛がしっとりと濡れたまま、 火傷にも似た跡を残している。 男色家は彼女に目さえくれず、 雨の相貌を描いていた。 明日の午前六時頃には、僕らは地球の終わりを目にしつつ、 ボーイフレンドやガールフレンド、あるいは父や母に、 別れの電話をかけていることだろう。 人は苦しくも悲しくもなく、 海の尾ひれを追って、 紺碧の岸辺にまで泳いでいく。 上昇する温度は、奏でた音の数々を、 光沢紙の上で燃やしていく。 華氏212で喪を見るのは、 美貌のみなしご。 貧民窟から抜け出せたのは、 隻眼の絵描きと美女の詩人だけ。 太陽は燃え尽きることを急いでいたのか、燃焼を加速させて、 醜い顔を見せると、僕らが本当のことを言うまで待ってはくれなかった。 明日は最後の日だと言うのに、 僕はタイプする文章を拾い終えると、 新しく呼びかける人を探し始めるのだろう。 波のようにうねる鏡の上で、 揺らめいては消えるのは、 ありがとうもごめんなさいも言わずに、 この世を去っていく肉体の、 強く、強く、濁った血。



波間の終わり ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 3
P V 数 : 1117.2
お気に入り数: 0
投票数   : 0
ポイント数 : 0

作成日時 2022-08-04
コメント日時 2022-08-05
#現代詩 #縦書き
項目全期間(2025/04/09現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
可読性00
エンタメ00
技巧00
音韻00
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叙情性00
前衛性00
可読性00
 エンタメ00
技巧00
音韻00
構成00
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閲覧指数:1117.2
2025/04/09 15時36分14秒現在
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    作品に書かれた推薦文

波間の終わり コメントセクション

コメント数(3)
エイクピア
作品へ
(2022-08-05)

自殺のプロセスを書いた詩でしょうか。太陽と海が遺書の紙であるかのような錯覚を覚えました。

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stereotype2085
さんへ
(2022-08-05)

ボルカさん、コメントありがとうございます。科学的考察、シミュレーションが詩的な文体になり得ると、ボルカさんのコメントを読んで発見し、改めて驚いています。ネット詩の良いところですね。レスポンスが詩に新たな彩りを与え、奥行きをもたらすという。明日の午前六時は、多分来るべきものとして、永遠に固着してそこに存在するのでしょう。ありがとうございました。

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stereotype2085
エイクピアさんへ
(2022-08-05)

エイクピアさん、コメントありがとうございます。この詩は地球の終わりを迎えても、逃れられない肉体の性についても書かれたものですが、これが遺書のようにも見えるというのは、全く僕にはなかった視点でした。この詩がもし遺書だとしたら、自賛するわけではないのですが、これほど美しい遺書はないのではないのでしょうか。傍観する一人の人間としてそんなことを思いました。

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