泥を塗るように来る夜
暗闇は風に吹かれ爛れ
散りゆく墨は静かに沈み
星落ちる時は刹那
今際の際のまどろみは
幾重にもかさなり
崩れて消えるその日まで
そこに在れ
朔日、微弱に振動し
からたちの木は凍てつきながら
息も絶え絶えに枝葉を揺らす
夢想家は廃れた庭園にひとり立つ
かたい地面を掘り返し
馬糞を混ぜて、種を蒔く
穴を塞いで水をやる
毎分、毎秒
衰える体を鞭打ち叩いて
無理くり動かすような日々
少しずつ絞められていく首
削られる肉、皮膚
掻きむしるほど黒ずむ爪
傷跡、滲む血
少しずつ、少しずつ
翅もないのに浮遊する
半透明の葬列に並ぶ
至極当然のことのように
俯き、押し黙る
ただ
ただ、どうしようもなく悲しくて
溢れ出る涙を堪えて
嗚咽する肩が震える
やがて沸騰した潮は
堰を切って流れ
呼吸は乱れ、嘔吐き
その場で跪き、うずくまる
透き通る人たちは、それに目もくれず
沈黙を守ったまま、私の中を通過する
十六夜と凪
沈黙のとき
梢を伸ばすからたちの木
その曲線美に潜む黄金比
月明かりを吸い込み
活性する幹の僅かな軋み
蠢きに、潤いはもたらされ
一本の生命は
夜よりも濃い影となり
崩れて消えるその日
そのときまでは、そこに在る
作品データ
コメント数 : 2
P V 数 : 795.3
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 4
作成日時 2022-08-02
コメント日時 2022-08-06
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 2 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 4 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 4 | 4 |
閲覧指数:795.3
2024/11/21 23時07分12秒現在
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良かったです。 種々の描写に感じ入るものがありました。 からたちに何を見たのか、託したのか。案外ただ、書いただけなのか。 読み終えてそんなことを考えました。 しかし難しい。 夢想家は廃れた庭園にひとり立つ かたい地面を掘り返し 馬糞を混ぜて、種を蒔く 穴を塞いで水をやる の部分、大好きです。
0読んでとろけるような黒い心、等 を考えます。作者が見つめる物語が大変ドラマチックで自分には書けません。 遊離している程溢れる言葉に意味があるのか。 近くであればそこの関係の仲と緊張感に於いて技術を習得しているでしょう。 蟻の様本人が、成長をテーマにしていなかったらどうなるのですか? 笑うことは出来ます。 早めに何かをわかって、どういう表情をされますか? ひとりの「私」か、何やら巨大なものに着いていく私か、これがこれからの難問(てつがく)です。哲学は一人で考えません。 輝くものを自分が発見したとき、分けて渡す為にどうすれば良いのでしょうか。その影を思います、深くも浅くも無いような影らを楽しみにして自力で頑張っています。 作者さまは、もともと詩を書かれていた人なのですか?
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