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不可能と敗北の愉楽
花に嵐 とにかく上手くいかないのだ カタカナに異化された慣用句から、 連なる滅茶苦茶な詩句の総覧は、 西脇順三郎風のシュルレアリスム詩を想起させる。 彼は非常に頭が良かった。 それ故に脳髄だけでとびきりの詩をこねることのできた 稀有な人物である。 そして大事なことだが彼はブルジョアであった。 いや、今の時代にそんなことは取り上げるべきではないか。 月に叢雲 こういう類の詩作品は絵画のように楽しむべき と、萩原朔太郎は西脇を評して言ったが、 この『花に嵐』も実際そうであろう。 しかし誰がこんな荒唐無稽な詩句を いちいち脳内に描き起こしてペインティング できるのであろうか。 けれども不可能と敗北に突き当たるとき 不思議なことだが私なんかは一種の愉楽に突き当たる。 理と路と整と然の箍が外れる音が心地よい。 絵画と音楽が出会うところ。 時空間の隙間に舟を浮かべた。 とにかく 上手くいかないのだ 順風満帆なんてそうそうあるものじゃない。
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作品データ
P V 数 : 975.4
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作成日時 2022-06-14
コメント日時 2022-06-14