皆さんこんにちは。桃です。
桃華とか桃香とかじゃなくて、桃です。
バラ科モモ属の落葉小高木の桃です。はい。
チャーミングで天下無敵なんです。
そう思ってたんですよ、農園にいるときはね。
自分が傷者だってわかって、凹んでた時も
「美味しくいただいてもらえるから、大丈夫だよ」
ってパパに慰めてもらったのさ。安心したな。
生食される機会は減っちゃうけど、お菓子だったり、ジュースだったり美味しくなれるって思って嬉しかったのよ。
未来は捨てたもんじゃないってね。
そんなこんなで出荷されて、桃以外の友達もたくさんできた。
新鮮な気持ちで楽しかったな。果物だけにねッ!
雲行きが怪しくなってきたのは、最初で最後の出勤の時。よく晴れた日だった。たぶん。
そこで出来たいろんな友達と共にミキサーへ出勤だったのよ。まあみんなと一緒にいられるなら、いっかってね。
いざお仕事。
自分の身体を振り絞って、あなたのもとへ。
これで、ついに自分も天寿を全うできるって、おいしいって喜んでもらえるって。
最高の気分でした。
遠のく意識の中で聴こえた声が忘れられないのよ。
「美味しい!!何入ってるんやろ?んーバナナとみかんとりんご?他はわからんわ(笑)ほぼバナナ(笑)」
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笑えねえよ!!!私はここにいるんだよ!!
美味しくなるために頑張ってきたのに!
てめえら動物のためによぉ!
おいおい、私は何のために生きてきたんだ…
友達のせいで、個性を消されちまうなんて…
くそうぅぅぅぅあうぉぉおう
…あ、ごめんなさい。取り乱しちゃいました。
来世に期待させていただきます。
次こそは、チャーミングで天下無敵な私に生まれ変わります。あなたの虜に…
桃そのものが主人公と言う大胆な設定だと思いました。ミキサーへの出勤。飲まれてしまう死の恐怖は無いのだろうかと思いました。天寿と言う単語。最高の気分。遠のく意識。ほぼバナナと言う言動は桃にとって残念な言動だったのだろうかと思いました。
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