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じんべえざめのおわり
祖母の家が怖かった。 リビングのある母家はなんとも思わなかったけれど、離れは全くの異世界だった。 あの夏の日を思い出す。 ミンミンゼミが喧しい真昼間に離れの玄関でサンダルを脱いで三和土から上がると、一番先に床につけた右足の親指からひゅっと冷気が一気に伝わってきて、体の芯から凍るような心地がする。 夏なのに。 踏み入れた先の廊下はいつも真っ暗で、何故か照明がひとつもないのである。 例えるとジンベエザメが巨大な口を開けて餌の魚やプランクトンをこっちだよ、と誘っているような感じの場所だった。 そのまま玄関が閉じて胃の中に閉じ込められるんじゃと思うほどには暗い。 そんな中でもミンミンゼミはずっと鳴き続けていた。 小さい頃は深い海の中で延々と泳ぎ続けているイメージのあったジンベエザメだけれど、 最期はその深い海の底に沈んで深海生物の餌になってしまうらしい。 「終わり」が「分かった」時、僕は大人になった心地がした。
じんべえざめのおわり ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 756.3
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2022-05-02
コメント日時 2022-05-03
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
子供から見ると祖母って怖いですよね、この世のものではないような。ミンミンゼミは何かの象徴でしょうか。怖いジンベエザメの行く末が分かった時、何か解放されたような感じがして大人になった気がする。本当に素直な詩だと思います。僕の場合も言語化するとこんな感じかな。
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