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悪夢のナイフ
私は追い詰められなければ本当の力は出ないらしい。殺されそうにならないと限界までの力が出ないらしい。倦怠感で死にそうになった。私はリストカットする人の気持ちもリストカット自体も興味がないが、胸を刺してみたいと思ったことが若い頃にある。ちょうど二十四歳頃だ、就職活動をしなかったので追い込まれていた時期だ。本当の包丁を持ち出す気は毛頭ないので真似事だけした。あの頃は確かに心では死にたいと思っていたのだろう、でも若い体は生きようと欲する。今が曖昧に幸福で曖昧に不幸なのがいけないのかもしれない。心を躍動させるような何かが欲しい、何かの出来事が欲しい。 私は憂鬱な気持ちを抱えながら近くの高層マンションの近くを歩いた。突然、私の目前に何かが降ってきた。 それは衝撃でぐしゃぐしゃになった人体だった。見上げると窓を割って人間が続々と落下してくる。割れるようなガラスなのかと疑問を抱いたが、次々と人間が奇怪な形をして周りに散らばっていく。 私はとっさに悪夢を見ていると思った。 現実では決して起こり得ないことが起きている。こんなことは歴史的事件でも起きなければあり得ない話だ。 私は思いっきり頭を振った。するとベッドの角にしたたか頭をぶつけた。 痛みを堪えていると二つ違いの妹がベッドに乗り上がって包丁でしこたま私の胸を刺していた。 「死にたいんでしょ、日記で見たわよ、殺してあげる」 彼女はしきりに私を刺していた。布団中に血が広がるが痛みが出ない。 彼女は豚のような肝臓を私の胸に乗せて刺していたのだ。彼女はその後病院の車に乗せられて運ばれていった。 そうだ、昨日彼女は病院から帰ってきたばかりだった。私はその時思った。あれは本当に豚の肝臓だったのか。救急車のサイレンが鳴りやまない。
悪夢のナイフ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 563.2
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2022-05-02
コメント日時 2022-05-02
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
私は生きていたのでしょうか。
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