別枠表示
カレンダー
カレンダーをめくるたびに 自分も正常な心の持ち主になったものだと うれしく思う カレンダーをめくることすらしなかった 荒んだ日々が若い頃にあった いろいろな出来事や持ち物を受け容れられなかった カレンダーを自分で買ったことはなかった もらい物のカレンダーを部屋の壁の余白に掛けていた いい加減な時で停止したまま進まない紙のカレンダー 時間なんて気にしていられなかった と言っても幸福な若い心で生活を疾走していたのではなかった 僕の心は生活などしていなかった 両親への愛が育まれることなく十八歳になって そのまま上京して一人暮らし 大学で学べるということがどんなに恵まれていることかなんて分からなかった あらゆる物事を貶し否定しながら何か生み出そうとしていたおかしな青年 時間とお金がすすり泣いて限度を訴えていたはずなのに 僕の耳にはそれが聞こえなかった 否定に否定を重ねてしかも肯定にならなかった暮らしの後に こんな円い健全な生活が来るなんて不思議なことだ カレンダーをめくることができることは当たり前のことではない おそらくは僕の心の中にはいまだ数々の叛乱が消えずに眠っている でもたった一つの肯定を覚えただけでそれらは被われ僕は変わったのだ 今カレンダーをめくる僕の指にこの人生への愛がみなぎっている この愛の由来は容易に分かる めくられなかった数え切れないほどのカレンダーの頁をかえりみる 思い出への情けある心が年月を経て生まれたから 年月そして肯定 僕らの反抗は続くものではないけれども 忘れ去ることもまたできない信仰のようなものだ 月が変われば当然のようにカレンダーをめくる時 めくらなかったことのあるカレンダーの頁のことを思い しばらく僕の指は過ぎた時間の水たまりに浸される
カレンダー ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 857.5
お気に入り数: 1
投票数 : 3
ポイント数 : 0
作成日時 2022-04-09
コメント日時 2022-04-09
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
嗚呼、痛いほど共感?共鳴しちゃいます。 カレンダーめくる度、わたしも自信になるんですよね、、 先月も乗り切ったって。
1あなたの赤裸々な心情に触れ、心が動く... 白猫社賞の二作品目も、同じように感動したんだった。 私の一番好きな作風です。
1カレンダーの頁がめくられるようになったのは結婚されたからでしょうか。そしてお子様も生まれて。 僕の場合はずっとカレンダーはめくれませんでしたけど。前半は自分を見ているようでした。
1お読み下さりありがとうございます。書いてよかったぁ、と純粋にうれしく思います。もし好運にも誰かに読んでいただけたら、中に共感、共鳴してもらえる人がいると信じていました。なぜならビーレビのような場に集まる人々は何かを書いたり読んだりする人々で、そういう人々は何か、何でもいい、問題を胸に抱いているものだと思うからです。昔、『偉大なる不良たち』と銘打った角川文庫の復刊シリーズがありました。私たちもこの意味で「不良」だと思います。カレンダーをめくることの実感も埋もれてしまわずに尾崎さんに届いたようで、よかったです。
1お読み下さりありがとうございます。格好いいフレーズと感じられたとのこと、うれしく思います。そういうものが作中にあると良いなと、人の書いたものを読む時にも自分で書く時にも思っています。 カレンダーを、 >時を進めている実感としての象徴でありながら、現在地に足をつけていることのそれでもあるのかな とまで洞察して下さり、ありがたく思います。
0お読み下さりありがとうございます。この拙作のような作風もやはりどんな作風とも同じように好みが分かれるかと思います。YUMENOKENZIさん、いつもご支持くださりありがとうー!
1お読み下さりありがとうございます。この作をツイートで共有して発信した時、自分でなんの工夫もない詩であると書いたのでしたが、やはり言葉選び・表現にはこだわりました。共感、そして美しさまで感じて下さりうれしい限りです。
2お読み下さりありがとうございます。カレンダーをめくることができるようになったのは、なんとか一人の社会人になれたから、とでも言いましょうか。冷や汗とかっこ悪さと図々しさと傲慢さのまじった青春時代でした。同じような?生活をした人もいるだろうと思います。北川さんもそんな一人なのかなぁ。普遍性などと言えばオーバーですが、それに似たものがこの拙作にあったかもしれないと思いました。ありがとうございました。
0