テレビに映った顔が全部同じだった時、とうとう自分も壊れたと思った。誰の家のどのチャンネルも似たようなものだった。災害情報のように、他人の不幸を繰り返し映すだけだった。何も言えずに黙って眺めていると、好きだった女の子の背中の陰は彼女も知らないうちに翼に変わった。運命に背くと運命が腹を立てる。世の中には正しい道があって、それは自分しか知らないと叫んで彼女は天使みたいに青空へ飛び立っていった。いや、愛って奴は本当に大変だ。犬も豚も猫も鼠も、癒やしはいらない。人は言質を取られるのが怖くて、骨で出来た檻の中に肉で出来た魂を飼っている。優しい嘘をつく人間のために、神様は千年続く愛を施すのだと思う。テレビを消して彼女の座っていた椅子に家族のことを話し始めると、どの椅子も疑うより先に希望のある夢を信じたがった。この川の先に滝があると言うか言わないかの違いで、どのみち皆同じ船に乗っていることには変わりない。触れる距離だろうと、死に別れようと、信仰したければ好きなだけすればいいじゃないか。どんなに泣いても仕方ないと納得されてしまうくらいに貧しくて、夕暮れ時、家に帰る前に絶望と地面に書いている。絵を描こうと思った初めての人間が作っている百人ぐらいの小さな組合が、子供たちに好きな空を描くささやかな自由を約束している。誰が、いつ、どんな風に檻の中で息絶えてもいいように、目には見えない自分の背中の陰の絵をてのひらに描かせてくれる。
作品データ
コメント数 : 6
P V 数 : 975.7
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2022-04-03
コメント日時 2022-04-29
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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2024/11/21 23時02分24秒現在
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4月になってまだ4日だけれども、この作品、今月投稿されたなかで読んで1番好きになりました。私はあまり共感という言葉を使いたくない主義の人間ですが、この作品に共感を覚えました。同じことを時に想う。
0同じ方がずっと同じ評価を続けてくれることもあれば、その逆もある。そこにある程度共通する評価基準があっていい筈なんですが、分からないんですよね。何を良しとされているか。これは共感軸に振れているのか…と思いながら眺めています。 読んで下さって有難うございます。励まされます。
0思索のデッサンがいつまでも続いて、それを眺めていくうちに贅沢な一時を過ごしました。このようなイメージの現像のし方が私にはできません。きっと空想に手馴れた人の為せる技だと思います
0他人の不幸は難しいですね、「彼女」が飛び立つ青空。呉越同舟的な意味なのかもしれませんが、単なるボヤキに終わらない、詩法、骨法が有るような気がしました。
0その場の空気を書いているような感じなのかもしれません。 そこに真新しい花があり、少し冷めた朝食があり、窓から日光が差せば、 今日はとても穏やかな一日だと分かるような。 読んで下さって有難うございます。
0この「彼女」という人はいつも何かやらかしてくれます。 日々悲しく思い出される記憶を元に、自分を慰めるつもりで書いたものです。 これに限らず、私の詩作は大抵同じ理由です。 有難うございます。
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