体が硬くなったままで原っぱに寝そべっていたけれど、
どうしてもあの日の君の言葉が僕を捉えて離さないんだ。
どうやら僕の心臓は君に貫かれて杭を打ちこまれて、
出血もしないで青い空に吊し上げられている。そんな風景の悲しい話。
なまけてぼんやりしていても僕を叱る人はいないし、
僕が世界を捨てる前に、呆れて僕を捨てたのは世界の方だ。
何をしたって何を試したって僕が帰るのは君の声。
昼間なのに月が見えそうな不思議な空の下で、
一息つくごとに命が削られているのは知っているんだけど、
今の僕は英単語帳もSNSも開く気になれないんだ。
お父さんやお母さんがどうしてもそんな僕を許せないのなら、
先に謝っておくよ。涙がバリバリに乾いて割れてしまったあとに、
ごめんなさい。
雲は一向に現れる気配はないし、雨を降らせて泣いてもくれない。
離れるためにありがとうって言わないといけないならば、
僕はもっと呪われてもいいし、業火に焼かれて死んでもいいよ。
もし体裁よく二人を別つための、道具としての言いようならば、
パックリと口を開けた、
地面の底の暗い場所で、
一人きり考えもせず、
ありがとうだなんて燃やしてしまえ。
作品データ
コメント数 : 8
P V 数 : 1593.2
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2022-03-14
コメント日時 2022-03-16
#現代詩
#縦書き
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2024/11/21 19時27分59秒現在
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一言に押し込めてしまうのはあまり誠実な向き合い方とは思えないですけれど「青春」という感じの作品ですね。 若々しい苦悩とか自暴自棄的な時に自己破壊的な憂鬱、真っ直ぐな言葉選びなど、とても危うく美しい作品だと思いました。
0橙色さん、コメントありがとうございます。この詩は前作の「風は、失明した」の反省点を活かして作られています。「風は…」自体は僕自身良作だと思っているのですが、コメントが一つもつかなかった様子からして分からなかった、あるいは良いと思わなかった方が多数いたのだと思われます。良いと思わなかったという理由の方は僕自身でコントロール出来るものではありませんので、少なくとも分かりやすい作品を今回は作ろうと思いました。「青春」の二文字を想起させたのはそんなところに理由があるのだと思います。ぼんやりとツイキャスの準備をしている間ある曲を聴いていたのですが、ただ徒然に心境を、しかも決して前向きとは言えない心境を淡々と歌い上げるその曲の歌詞が、僕の今の気持ちと絶妙にリンクしたのです。技術的には「風は…」の方がこなれていると思います。しかし実直さはこの作品が上回ったのでしょう。結果としての橙色さんからの好評。嬉しく思います。この詩はある女性をイメージして、モチーフにして作られています。危うく美しいとの評は、そのままモチーフとなったその女性との危うく美しい関係、そして僕自身が彼女へ今もって抱く心証へと繋がるのだと思います。話しすぎたようです。とにかくも好評ありがとうございます。
0室町さん、こんばんは。コメントありがとうございます。青い空に吊し上げられている、の箇所は表現として凝ったものを唯一使ったパートで、そこに着目していただき嬉しいです。殉情とはどうして似たりよったりなのか。それは僕も分かりません。しかし表現的にあるいは技巧として凝ったり、衒ったりするのを省いたのがこの作品なのです。結果として上手く仕上がったと思っています。自分の心証や感情に技術的な介入をさせても不発に終わるというのは、「風は、失明した」である意味立証されてもいますからね。かと言って「風は…」がダメな作品だとは思っていません。何しろモデルになった、モチーフとなった女性は同じなので。とにかくもこの作品はコメを入れてみようと思った方が、少なくともいらっしゃったという点で良かったのだと思います。特に自分の心情に素直になる、自分の感情と地続きの表現をするという意味において。僕にとって印象的な作品になりました。
0ねねむさん、コメントありがとうございます。この作品は二連目まではスムーズに出来ていて、最終連の落としどころがなかなか見つからず少し苦労したのですが、結局のところ当初抱いていたイメージに帰着するという方法を取りました。その点ねねむさんからも評価をいただいて嬉しく思います。ところで今日はホワイトデーですね。この「草原の峡谷」というタイトルは、僕の大好きなバンドGRASS VALLEYをほぼそのまま直訳したものです。なぜこの日に「草原の峡谷」なのか。この詩のモデルとなった方は今から一週間から十日もすれば分かっていただけると思います。その方の心証が悪くならないのを願うばかりです。捉えて離れがたい出会い。ねねむさん、おありになりませんか?僕は幸福にもありました。そこは心底良かったと思っています。また喋りすぎましたね。失礼を。
1川崎さん、コメントありがとうございます。峡谷がどこにあったのか、ということでしょうか。そうですね。あくまでイメージの世界です。深い峡谷に降りていくほど想っていた、あるいは降りていくほど悲しみが深いというような。そういうものです。
0こんにちは。ステレオタイプさんの作品って、意外と(?)君という存在が出てくるのだなあということを、そういえば、今更ですが思いました。 初読の感想は、ちょっと君君感が強いと思ったのですが、 >どうやら僕の心臓は君に貫かれて杭を打ちこまれて、 出血もしないで青い空に吊し上げられている。そんな風景の悲しい話 ここなんか、キレて(キレてはないのだが…)早口で次から次に言葉を重ねるティーンめいた風情があって良いと思いました。君君しまくるか、できるだけ秘密にするかしたほうが良いとよく思うのですが、前者コースということです。
0いすきさん、コメントありがとうございます。そうですね。この作品はイメージしている方=君ですから、どうしても「君」の筆圧が高くなりますね。青い空に吊し上げられている、は実直な詩の中で際立っている表現だと思います。好評を受けて嬉しいです。君君コースを選んでこの詩は良かったですね。
0comoestaさん、コメントありがとうございます。前の方の返信にも書いたのですが、この詩、三連目をどう決めるかに非常に悩みまして。ですが最後のフレーズ「ありがとうだなんて燃やしてしまえ」が決まると一気に締まりが出て書きあげることが出来ました。やはり目立ちますね。この一節は。
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