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青い夜の夢
*眠り* 揚羽蝶のさなぎを見たことがあるかい 人が過ぎ去った昔を想うとき 蝶の幼虫はその想いを宿したさなぎになる 畑の野菜に水をやり 土をたがやす 食事を用意して 朝からの出来事を話すとき 貴女の目はまっすぐにわたしを見ている 眠りにはいる前のひととき 貴女は蝶のことを想うという 花の蜜と水だけを吸って 空に浮くように 雲になり ちいさなベッドのなかで 目をとじるのだろう 光りの洪水が行き過ぎれば 鱗粉のタペストリーとなって レム睡眠の森のなかで 清流の樹々と手をつなぐ 濡れた枝のあいだにとまり まばゆくひかりながら *青い夜の夢* 月の樹が花を咲かせる夜 青いビロードの服を着たわたしは ひかりの人魚のような貴女の手をとり 大麦の葉がしげる畑をこえ 銀色の靴で夜空を飛ぶ 荒地の一軒家は明るい 白くて長い手袋をした貴女も 友人である七面鳥と握手をする (ごきげんよう (これからもよろしくね バイオリンの演奏にあわせて 七面鳥が陽気にうたう 夜の小さな結婚式は 薔薇を手にした客でいっぱいになった わたしは貴女の手をとり 牡牛座のちかくで小船に乗る 静かな青い湖 貴女は星をいくつも集めて小瓶に詰める きっと朝になれば 瓶の中の星は見えなくなっているだろう 貴女も 夢の中でのわたしを忘れ去るのだから *幻影* 夜の書斎で 机を照らすひかりのなか 揚羽蝶の残像が 風に舞う花びらのように揺れ 翅を ぱたぱたとさせていた どこかへ行きたいのだろうか わたしにはわかる 行きたいところがあるわけではない 生れてきたものはみな きっと 自由になりたいのだろう ナツメヤシの実を齧りながら 古い本のページをめくる 幻影の蝶が飛ぶゆくえには 目を閉じずとも わたしたちの若かった日がある どんな場所に向かったとしても 後悔などないように 今を生きる命をむだにはしない
青い夜の夢 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1316.5
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 12
作成日時 2022-03-07
コメント日時 2022-03-11
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 7 | 7 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 2 | 2 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 12 | 12 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 3.5 | 3.5 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0.5 | 0.5 |
エンタメ | 1 | 1 |
技巧 | 0.5 | 0.5 |
音韻 | 0.5 | 0.5 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 6 | 6 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
たしかに、深尾さん、これはいいですよ。以前に「三浦さん、あたしは深尾さんの作風がじつは好きなんですよね」と打ち明けてきた女子がいたが、この作品なら、私にもわかる。
1こんにちは 想像力の豊かさに驚きました。私には難解さのスレスレのところにあると感じました。これが現代詩なのでしょうね。分析をしようにもそれを拒む詩のように感じました。おそらくこれは理解する詩ではなく味わう詩だと感じました。
1お読みくださりありがとうございます。 秀作とのお褒めの言葉をいただき、嬉しく思います。 *青い夜の夢*はシャガールの絵画を見たあとに書き上げました。 純粋に鑑賞するために再読したくなるとのこと。創作の冥利に尽きることで、お気持ちに深く感謝いたします。
0お読みくださりありがとうございます。 三浦さんから初めて詩を褒められました。とても嬉しく思います。詩を続けていて良かったです。 三浦さんからお褒めのコメントをいただいた昨晩、地震がありました。震度2だったようです。本当です。
0お読みくださりありがとうございます。 想像力の豊かさをお感じいただいたとのこと。そして難解であったとのこと。難解であることは意図しておりませんでしたので、ご意見、今後の課題といたします。 私は詩を作る際に、映像的になるよう心掛けています。確かに論理性に欠けるかも知れません。
0映像と物語が浮かび、奥行きと広がりを感じる、味わい深い詩だと思いました。 夜、静かな時間に読み返したいです。
1お読みくださりありがとうございます。 味わい深い詩とのこと。とても嬉しく思います。 詩を読み返してもらえるのは、作者にとって幸せなことです。また、このような詩を書いてみたいと思いました。
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