憂鬱に没する私の宿痾においても尚、
どろんと死んだやうな目で顔を上げ
前を向く姿勢は崩さぬことで、
何とか死の誘惑からこれまでは逃れてきたが、
それも限界と何度思っただらうか。
死の淵から飛び降りずに
踏み留まったのは
生への激烈な執着と敗残者になることを嫌った私の思ひといふより
単なる偶然でしかない。
物憂げな魂を抱え込んでも尚、前を向くことで、
死の誘惑を振り払ひ、
無駄な足掻きと知りつつも
死臭をプンプンさせながら
さうして生き恥をさらし、
後は野となれ山となれと開き直り、
屈辱に塗れながら生きるのみ。
絶え絶えの生に倦み疲れたとはいへ、
この宇宙に一泡吹かせるまでは
何としてでも生きるといふ覚悟のもとで
この極度の宇宙嫌悪が負け戦と解った上で、
討ち死ぬことを本望として
ズタボロの魂を以て
抜刀一閃、宇宙をぶった斬って
吾が哀しみを少しでも宇宙に味はふことをさせられれば、
宇宙も少しは屈辱の何たるかを知り、
存在に尻込みする筈だ。
さすれば宇宙が存在を抱くことを遂には恥ぢ入り
宇宙は二度と存在なんぞを生むことなく、
――ちぇっ。
と、非在もまた深い懊悩の中にあるのだとの思ひを馳せ、
つまりは、宇宙それ自体が深い懊悩にあることを自覚するに至れば、
もうちっとはましな此の世が存在できたやもしれず、
その蓋然性に先づは宇宙が愕然とする筈なのである。
作品データ
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作成日時 2022-02-05
コメント日時 2022-02-06
#現代詩
#縦書き
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2024/11/21 23時38分45秒現在
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>この宇宙に一泡吹かせるまでは 世間ではなく宇宙としたところに詩の面白さがあるように思いました。 >抜刀一閃、宇宙をぶった斬って 面白い表現です。 存在という語彙も効果的だと思います。
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