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剖検
牛が眠る 微動だにせず ブルーシートに包まれて 生きているような外見は 一切動かず 一目見ただけで 死んでしまったと伝えてくる 腹を切る 不自然に膨らんだ 死因が詰まっている腹に 獣医がメスを入れていく 悪臭 さらに胃を切り 中を覗き込む 生前 ガスが張っていると 必死にガスを抜こうとした腹は ガス以上に 草が解けたペーストばかりが出てくる その胃は適切な動作を止めていた 「どうしようもなかったでしょうね」 獣医言い 草の悪い今年 消化器官が育たず 牛の一頭 命が朽ちた 数々の投薬 注射 皮下と静脈への点滴 ほぼ毎日ホースを胃まで入れてのガス抜き 努力と苦痛を超えて その命は 朽ちて行った 外気に触れるはずがなかった臓腑が 汚くその牛の死因を伝え 糸で閉じられていく 合掌 死臭が漂い 胃の内容物が匂い 死んだ牛が 病を訴えることなく 眠り続ける 鈍い光の眼球が こっちを見ながら 合掌 あと今日やる事は 餌やりだ 瞳輝く牛に
剖検 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 837.2
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2022-02-05
コメント日時 2022-02-06
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
先日あった実話を描いたのがこの作品です。 感情的になる暇もなく、すぐ側にいる子牛が病気になったり腹を空かせたりするので淡々と過ごすしかなかったりします。 精々この出来事から教訓を得ることぐらいしかできないですし。 食肉になっていく牛たちと人間はある意味ですは違いますが、死ぬという事はかわらないでしょう。
1この詩、ほんとにいい。ほんとにいいと読んでおもえる詩なんて年に数えるほどしかない。それはその詩を書いた当人が、メールでもなくLINEでもなく絵でも小説でもブログでもなくて、ただただ詩を書くのでしかない、言葉を組み立てて現実を超えようとする宿りの行為だからだと思う。人生においてそう多い事ではないからだと思う。読んでよかったです。
1正直暗い内容の作品なので本当にいいという評価を下さるとは思いませんでした。 確かにこのどうしようもなかった子牛の死という現実を超えるために書いた面があります。 それがよかったみたいですね。 ゲーテは「最上の時にも最悪の時にも人は芸術を必要とする」という意味合いの言葉を残してますが、現実を超えるために詩は有効なようです。
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