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願い
子どものころ、 さびれた海水浴場の跡のすぐそばの、唐島という島に行った。 祖母から聞いていた、遠い異国から流れてきたというその島。 苔むした神社には鳥がいて、たやすく近づいてはならないと鳴く。 境内の木々の小枝をおったりしたり、 島のごつごつした海岸から、真珠色をした巻貝などをとって、持ち帰ってはならない。 祖母は島の近くに生まれた者だった。 境内は木々がうっそうと茂り、昼でも影しかないようにうす暗い。 私は願った。 教えてください。人の死と畜生の死には違いがあるのだろうか。 むかしの人々は、 なぜ人の命と畜生の命をちがうものだと、考えたのだろうか。 鬼とも神とも呼ばれるのだろう。 女神に愛されれば、願いは何でもすべてかなうという。 古い建物には市鬼島姫神社と書かれていた。 都会から地元へ帰ってきたとき、 綿毛のような雪が降っていた。 知人にスナックに連れられていき、その女を知った。 大きな瞳がうつくしかった。 金をかぞえ、 ほんぽうにふるまうのを好ましく思い、深入りすることになる。 ベッドに入り女のことをおもう。女は島の近くに生まれた者だった。 女たちが人の死肉をむさぼり、食うようすの冬の夢を見た。 ベッドから起き、急いでスナックへ向かった。 あれから過ぎた日々を想う。もう若くはない。 まばらに人が行きかう夜の街。 私はずっと、島にあった貝殻を求めていた。 人は人の世界のことしかわからない。答えなどありはしない。 答えなどもういらないのだから、 静かに暮らしたい。
願い ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 914.9
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 3
作成日時 2022-01-29
コメント日時 2022-01-30
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1 | 1 |
総合ポイント | 3 | 3 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1 | 1 |
総合 | 3 | 3 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
「願い」でB’zの曲を思い出しました。人間と畜生。女の獣人の様な行為への幻想。なぜ貝殻を求めるのだろうかと思いました。答えは無いとしても、示唆はあると思いました。
0お読みくださりありがとうございます。 >なぜ貝殻を求めるのだろうかと思いました。 タブーとされる事柄には理由があるようです。島の禁忌である貝殻を持ち去りたいという気持ちは好奇心だと思います。 B’zの「願い」のサビのメロディーは、私も知っています。
0お読みくださりありがとうございます。 情景、想念が浮かんでこられたとのこと、詩を楽しんでいただければ幸いです。 私は田舎で穏やかに暮らしているので、"現在"というものの生命力の強さをあまり自覚できていません。 身の回りのことだけが現実だと感じられ、日々押し寄せる情報はまるで絵空事のようなものです。
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