背中の樹 - B-REVIEW
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PICK UP - REVIEW

ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



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背中の樹    

生まれた時には何も無い綺麗な背中だった 僕もまたそうだった 一歳を過ぎた頃、僕の背中には小さな芽が生えた 家族は僕の背中の芽を写真に収めてる 僕の背中の樹は上へと真っ直ぐと伸びている それは皆もそうで、細い樹がお遊戯で揺れてる 僕等はいつも元気に外を遊び回る 何処に居ても木漏れ日の下だった ある男の子は樹の根元が曲がっていた そんな人達は決まって性格が捻くれてた 両親が離婚して此所に来た女の子は 既に葉が紅葉だったり枯れたりしてた そんな人達は決まって苦労人だった 母親には背中を良くみなさいと言われた 太く大きい人は偉い人で 細い人はちょっと貧しい人 胸辺りに生えてる人は芸術家気質 腰辺りに生えてる人はスポーツ選手向き 枝が多い人は神経が多感で 枝が少ない人はさっぱりしてる人 樹に止まる生き物 実が付いてるか 木肌から その人がある程度分かるんだそうだ お爺ちゃんの背中の樹は88°だった お爺ちゃんは口癖に言う 「もう直俺は死ぬかもしれんな」と 僕はそれが嫌だとお爺ちゃんに抱き付いてた だけど、お爺ちゃんは死んだ 背中の樹は90°だった 背中から真横に真っ直ぐと生えていた 葬儀屋は丁寧な穴を掘る お爺ちゃんを蹲る姿勢にして埋める お父さんの裾を僕はギュッと握っていた 「お爺ちゃんはこれからは樹として生きるんだ何百年もな」 そんなお父さんの背中の樹は36°だった 背中の樹の角度を見る度に、僕は少し不安だった まだ1°まだ1°そう言い聞かせてた


背中の樹 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 8
P V 数 : 1177.6
お気に入り数: 0
投票数   : 0
ポイント数 : 27

作成日時 2017-10-30
コメント日時 2017-11-06
項目全期間(2025/04/09現在)投稿後10日間
叙情性84
前衛性10
可読性74
エンタメ22
技巧74
音韻00
構成22
総合ポイント2716
 平均値  中央値 
叙情性44
前衛性0.50.5
可読性3.53.5
 エンタメ11
技巧3.53.5
音韻00
構成11
総合13.513.5
閲覧指数:1177.6
2025/04/09 16時43分25秒現在
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    作品に書かれた推薦文

背中の樹 コメントセクション

コメント数(8)
森田拓也
(2017-11-01)

こんばんは。 樹が生えている場所から、その人間の性質を表現されてるっていうのが、 とても不思議で、初体験の詩的感覚です。 とても楽しんで読ませていただいています。 この詩のユニークな感性は、やっぱり日々の鋭い人間観察から生まれたのかなって感じたんですけどね。 発想を生み出すのに難しかったのではないかな、と感じるのですが、さらっと巧みに表現されてるんですよね。 本当に不思議な詩。 最終連、面白いですね! 樹が生えてる角度を年齢に換算するって、すごい発想ですね。

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カオティクルConverge!!貴音さん
(2017-11-01)

森田さん、こんばんわです。 私は普段、深く詩に意味を込めたりしないんですが 今回のこの詩は人の一生を書いてみたかったんでやってみました。 けど普通に一生を書いちゃつまらないので 人間の背中に樹が生えるSF(少し不思議)やってみました。 最初は花だったんですけど 別の形になって生きていくのに、花はありきたり過ぎるので それに代わる何かで苦労しました。 樹で行こうと決まったら後はスラーと書けたんですけど それまでがちょっと大変でした。 また驚かせる事が出来るように精進致します。

0
まりも
(2017-11-02)

気持ちの「き」が見えて来る、ような・・・不思議な感覚を持った寓話として拝読。 「き」の生え方や育ち方、様子などが、その人の性格や人となりを表している・・・敏感な人が感じ取る、その人の「ひととなり」を感じさせる「オーラ」のようなものを、わかりやすい「き」として表したら、こんな感じになるのかもしれない。見えないものをユーモラスに「見える化」してもらったような感覚がありました。 同世代の人たちの「き」は、あくまでも生命力であったり、性格をあらわすもの、であったりするようですが・・・ おじいちゃんの背中の木の「角度」は、生命時計の針の角度でもあるようで・・・残りの命を示してしまう、そんな不思議さを感じさせます。 「き」の様子や育ち方に着目する前半と、残りの命の長さに気づかせる後半、その双方を「き」が持っている、という部分、なかなかユニークな作品だと思いました。

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カオティクルConverge!!貴音さん
(2017-11-02)

まりもさん、こんばんわ。 読んでいただきありがとうございます。 一番書きたかったのは後半の人の一生だったのですが、そればかりだと重い感じになりそうだったので、樹の一本、一本がそれぞれ別の形を作っているのを人の経験や個性に嵌めてみました。 でも書いた後に客観視してみて、怖い世界だなと我ながら思っています。人の個性や経験、寿命がある程度形として見えてると特定されてしまう世界ですから。

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渡辺八畳
(2017-11-03)

良いなぁこれ。特に翁の葬儀のくだり、木がただの視覚的なギミックでなくそれが意味を成しているのが良い。ただ後半がそうなだけに2連目がちょっとだれてしまうのが惜しい。

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カオティクルConverge!!貴音さん
(2017-11-03)

祝儀敷さん。こんばんは。2連目って事は、性格とかの部分ですよね?その部分はその部分で切り取って前なり後ろなり足していけば良かったのかも知れません。私はどうやら1つにやりたいことを詰め込み過ぎてしまったようです。

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斉藤木馬
(2017-11-05)

人生を樹木の年輪に例えることはありますが、角度とは。背中に生えるということは他人の樹はよく観察できたとしても、おそらく自分の樹のありさまを知ることは難しい。そのことが作品に深みを与えていると思います。

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カオティクルConverge!!貴音さん
(2017-11-06)

斉藤木馬さん、こんばんは。 年輪は考えたんですけど、老いて出来る皺があるので、二重になっちゃうかなと思い止めました。 はい、だから後ろ指を指されない様にって意味も込めてます。この話の中じゃ、取り繕っても形になって見えるので。

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投稿作品数: 1