窓を開けると世界中が白かった。みんなが
白くなることを望んでいた。みんな、もう疲
れていたのだ。町中の絵具が売り切れた。白
以外の色はみんな捨てられた。信号ですら白
だけになった。ぼくは静かに紙を切り取って
いた。まとまった紙を切るたびに枯れた花が
もらえた。そういう世界だった。枯れた花は
食べることができた。ハサミで切り取ってふ
やかして食べるのだ。懐かしい味がした。ぼ
くはそれだけで満足だった。世界がずっとず
っと白くなっても、ぼくはそんなこと関係な
いと言わんばかりに白い紙を切り続けていた。
ぼくはそのうちに、世界には光と影があることに気づいた。
みんな疲れて白にしようとしたけど、すべ
てを白くすることはできないのだった。ぼく
が、ぼくだけが気づいてしまったようだった。
そんな気持ちのことを、ぼくはずいぶん色が
なく、それはそれはしろいものだなと思った。
作品データ
コメント数 : 4
P V 数 : 1328.5
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 5
作成日時 2021-12-23
コメント日時 2021-12-25
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 3 | 3 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 5 | 5 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 3 | 3 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 5 | 5 |
閲覧指数:1328.5
2024/11/21 22時55分33秒現在
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不可視の原稿用紙に副って書かれた、白紙の上の黒い文字群。白を希求すればする毎に黒くなってゆく(文字に拠って)、 その存在が食した「枯れた花」は、もしや。黒く傷んでいたのかもしれません。 突き放すかの様な終行が、実に白眉であると。
0文体に純粋さを感じました。書かれてある内容からではなくて文体からそれを感じました。おそらくは作者さんの営みが出ているからでしょう。同じ言葉を遣っていても滲み出てしまう息遣いがある。ない作品もある。私はその滲み出るものを読みたい。読んでよかったと思いました。
0ご評価いただきありがとうございます。 花は黒く傷んでいたのか?そういうことは私には分かりませんが、読み手によって色々変わるのかも知れません。 確かに終わり方が特徴的なのかもしれません。白眉とのことで、ありがとうございました。
0伝わる詩は、あくまで文体を伝って宿る、というような予感を持っています。それが正しいのかは分かりませんが、文体を言及していただけてうれしい気がします。 (それが毎回ではなくても)純粋に滲み出るものがなければ詩を書く意味はない気もしています。説明できないものが少しでも宿っていたらうれしいです。ご評価ありがとうございました。
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