噂話が途切れる前に、
まだ人が少しでも僕に関心を持っている間に、
僕は手紙を遺して教室をあとにした。
誰もが眉をひそめ、陰口さえ叩いたけれど、
漠然とした退屈に僕は耐えられなくなって、
結局すべての人とさよならしたんだ。
遠くへ目を見定めたカモメが横切っていく。
うす雲は喪失の一歩手前だ。
線路を走る列車はなくなって久しいし、
パパの殉教地は、とっくの昔に廃ビルとなってしまった。
手傘をさして仰いだ空は、
青だとか濃紺だとか言うには、
あまりに普通でありきたりで平凡で、
だからこそのたうち回るほどの、
苦しみを感じる。
もし満開のツバキが、
望まずして切り取られたとしても、
僕が願うのはただ、
僕自身の死でさえ、
ハッピーエンディングの伏線であること。
陽射しはひりつくのに生ぬるく、
恐ろしいほどの倦怠を僕に与えてくれる。
ゲームブック、落としたカード、USBメモリー、教科書、ノート、スケッチ、人狼、イヤホン、お守り、墓場。そしてスマホに書き残したメモさえ、既読をつけたまま放置されるメッセージの一つとなる。
今となっては、
そこに後悔はなく、あるのは歓喜。
生の歓びのみ。
雪溶け。
孤立した辺境にさえ、
僕が救いを見い出した時、
誰かが僕に耳打ちをする。
君は誘惑に絡めとられただけだって。
単にたぶらかされただけだって。
僕はそれでもかまわない。
着地点はひっそりと広がり、
地平線の遠景が、心地よく、
遠ざかる。
作品データ
コメント数 : 0
P V 数 : 1234.7
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2021-12-22
コメント日時 2021-12-22
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
閲覧指数:1234.7
2024/11/21 22時56分53秒現在
※ポイントを入れるにはログインが必要です
※自作品にはポイントを入れられません。