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葛藤が波のように行ったり来たり
作品を読んでまず気になったのは、なぜ「童話」なのか、という点でした。 童話は、表面上メルヘンでおとぎ話のような顔をしていますが、 実際には、シニカルで、残酷な一面を隠している場合があります。 「君」との思い出は、そんな「童話」のように、 うつくしい一面と、つらい側面とをあわせもっているからではないでしょうか。 作品の前半部分では、 >午前中に行けば ゆっくりと 思いだすことができるだろう とあるのですが、後半部分では、 >おそらく 半分も読めはしないだろう それで十分だ とあります。矛盾するような表現となっていますが、 いまは思い出に浸りたいという気持ちと、 やはり思いだしくないという相反する感情、葛藤を読み取ることができます。 もしかすると、 >明日 海を見にいこうと思う と日々思いながら、じつは行っていないじゃないかとも。 行こうか、行くまいか、 思い出に浸りたい、でも思いだしたくない、 そのような心の葛藤が波のように行ったり来たりする感情が >明日 海を見にいこうと思う という言葉のリフレインによって、 まさに海を眺めているようなせつない詩情を醸し出している作品です。
葛藤が波のように行ったり来たり ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 937.5
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作成日時 2021-12-14
コメント日時 2021-12-14