真面目さが欲であり
勤勉さが黒であり
正しいことが正しいとされない社会が大量に作りだす
ほうれい線の滑り台の真ん中で
一人愚痴をぼとんと落とした
僕もまた命
気づけば子供部屋で四十路になっていて
二本の足だけじゃ歩くのには足りないと
他人の善意で自分の道を舗装する男の
その先に待っているのは
彼の思い描いた理想をブラウン管で見ながら
臭い握り飯を齧るだけの木炭色の世界
それもまた命
人の欲がルブタンを履いて暴れ回る街に
自分だけのスポットライトがあるのだと誤解した少年が
暇を潰すためだけに互いを慰め合い
虚勢の羽を使えば空だって飛べると
最後はレンズ越しに見守られつつ
泥人形のように消え去っていった
それもまた命
今日も女は美しくないことの罪の重さにおびえながら
病的なまで自分を細く長く加工して見せている
果たして踊らされているのは
それを見ている男か、見られているアイツか
それを誰も気にしないよう大きい泡に隠されて
自分に残されたチーズをゆっくりと消費していく
それもまた命
今だけが自分のためにある時間だと
常に思って生きていければ
どんなに人が救われるのだろうか
生まれたことを後悔する人の
全ての感情が大海を呼び覚まし
大海は大地を起こし
大地は種を起こし
種は花を起こし
花は森を起こす
森は人を起こした
人は物質的な豊かさを享受し尽くして
もうお腹いっぱいになったからと
全員が成長を止めることに賛同して
そうしてこの星は回転するのをやめた
段々とお腹が空いてきた時には
何もかも、もう手遅れだった
そのとき
何も知らない宇宙は
いただきますも言わないで
まるでつまみ食いをする子供のように
一口ですべて食べてしまった
命もただの命ではない
しかして命でしかないと
今この文字を打っている自分の意識も
だんだん小さくなって
だんだん一つの点になって
ぴちゅん
それでおしまい
作品データ
コメント数 : 3
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作成日時 2021-12-03
コメント日時 2021-12-03
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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2024/11/21 23時14分51秒現在
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最終連の悲壮な感じが悲壮と言うよりは、宇宙だとか、物質の運命を人間に重ね合わせて居るのかもしれません。「命」の定義。命の定義と言うよりは生命の連続、生命現象の比喩的な表現なのかもしれません。第1連、第2連、第3連、第4連の最後に出て来る「命」と言う単語。僕=それと言うわけではないでしょうが、それに収斂する何かがこの詩の詩作モチベーションなのかもしれません。
0ただのひとつの点になって ぴちゅん それでおしまい。 その通りだと思います。 ぴちゅんの響きが良いです。
0巨視と微視が普く詩行に技巧的に工まれており、筆力の高さが窺い知れます。 ただ、何かが足りないと申しますならば、自己の詩作の可能性の限界へ挑戦する様な、熱量が感じられない処でございましょうか。 筆者が諦めていらっしゃられていては、読者も従うことしか叶いませんでしょうから。 何より、結句へ到る道筋が些か等閑に思えました。
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