幻想嫌いの俺たちも
「回想」という魔物がやって来るのを退けられない
古くからいるらしいその魔物は
俺たちの心臓に片足を突っ込み
話し出す
魔物がそこにいて話しているあいだ
俺たちは身動きできず
黙って聞いていなくてはならない
俺たちは決して目覚めることができず
起き上がろうとしても動けず
魔物が話し終えるまで苦しみながら聞かねばならない
魔物は何を語るか
一つ、かなわなかった甘美な希望
二つ、永遠に尽きない愛慕
三つ、償えない失敗
魔物が話し終えた瞬間俺たちは解かれて
地面を転がりやっとのことで立ち上がる
魔物の姿はもうない
魔物は俺たちに
自分の名前を伝える隙すらくれなかったように思えるが
呻きのうちに俺たちは何かをしゃべらされたに違いないのだ!
醜陋な聞き合わせはやめてくれ!
俺たちの結婚にまとわりつくな!
そもそも自分について自分に聞き合わせるとは!
砂と傷が膝と肘についている
それが魔物が確かにいたという証拠
今や静かな見慣れた風景
俺たちが溺れたばかりの無秩序は
疾く飛び去り
追う術もなく
二度と取り返せない
作品データ
コメント数 : 4
P V 数 : 1222.9
お気に入り数: 1
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作成日時 2021-11-20
コメント日時 2021-11-27
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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2024/11/21 23時34分46秒現在
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不意に前々から予定されていたかの様に魔物はやって来て、混乱させ、淡い希望を打ち砕き、最悪な想像だけを残して去っていきました。お前はこういう奴なんだって恐ろしい事ばかり言って、もう解決の言葉はどこにも無いのに、弁解の言葉ばかりが出てきます。魔物とは戦う事すらもう出来ない様になっていて。自分の内に潜む物は何より怖いですね。 すみません。蒼ざめるほど共感しました。
1お読みくださりありがとうございます。 本当に、夢ってやつは何をやらかすか分からないものです。甘美な夢も恐ろしい。魔物です。 その魔物は元をただせば自分の心であるわけでしょうけれど、自分の心の奥底まで容赦なく抉ってくるものです。夜昼問わず。私はたぶん普通より過去にとらわれやすいのだと思ったりもします。いろいろ覚えていて、忘れるということがないのです。皆、そうなのかなぁ。
1>魔物がそこにいて話しているあいだ >俺たちは身動きできず >黙って聞いていなくてはならない >俺たちは決して目覚めることができず >起き上がろうとしても動けず >魔物が話し終えるまで苦しみながら聞かねばならない というからには「俺たち」は寝転がっていて金縛り状態にあると読めるのだけど、まあ、回想というものが現在の意識の外から侵入すると考えても、寝転がる必然性はないように思います。 それから「聞き合わせ」である以上、こちら側(俺たち)からの働きかけが先であって、語るのが「魔物」だとしても呼ばれもしないのに語るというのは論理が破綻しているんじゃないでしょうか。 まあ、それは置くとしても随分古風な語り口で戸惑いました。しかし和訳された西洋「近代詩」の3軍選手みたいなおもしろさがある作品です。
1お読みくださりありがとうございます。 これを書いている時は一生懸命でした。怠けた気もしなかったので発表したわけですが、その後、自分で読んで、新しくも上手くもないとは思ったところです。主客同体でありながら分離して話を交わすというのはどこかで読んだような気がします。 制作にあたってはいろんな思いが交じり合って頭が乱れていて、なんとか一作にまとめたという感覚が残っています。用いた単語はさまざまですが、首尾一貫性がないものが出来上がったのはそのせいだと思います。たとえば、中盤、一つ、二つ、三つと数えあげていながら、最後に「無秩序」と言ってしまっているところなんかは破綻です。 それから語り口ですが、私も多くの人たちのように西洋の近代詩などの古い和訳を好んで読んでいた時期があるので、それらに似たのだと思います。模倣したわけではありませんが、こんな語り口になってしまいました。頭のどこかに染みついているのだと思います。 御批評ありがたく思います。言ってくださらなければ、私はまた、同じようなものを書くことになったことでしょう。
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