望遠。太陽が滲んでは埋もれていく。水平線は橙色に揺らぎ、もうその姿を見せることはない。星を今夜くらいは見上げてもいい。流れ星はとうの昔に消えていったのに、不思議と悲しくないのはなぜだ。
望郷。小さな教会の娘だった君を今でも思い出す。ラックの上に飾られているのは彼女がくれた貯金箱。夢にまで見るのは彼女の後ろ姿ではなく、きっとそれは愛情という、目に見えず、手でも触れられぬ、形のない、とてもとても奇妙なもの。
郷愁から引き戻されると、今この瞬間の出来事が激しく地面を揺らしている。
夜空の縁で消滅したのは名も無き一つの魂で、
海の底で葬られるのは無辜なる骨。
二人で話した時間を、もし仮に誰も見向きもせず、思い出さなくなったとしても、僕は微かに、霞みいく景色の中で振り返る。
いつも無防備だったあの人。諭すようにひたむきに、でも悪戯っぽく話してくれたあの人。傘もささずに手ぶらで出掛けて行った貴女は、雨に濡れずに済むのだろうか。感傷でもなく喪失感でもなく、胸に響いてくるのは貴女のちょっとだけ甲高い笑い声。
夜行列車が走り抜け、置き去りにした荷物と想い出を、例え取り戻せなくなるとしても、
焦げていく体に、
燃えて灰と消えていく指先に、
残るのは、
空も仰がず、地べたを見おろすこともせず、
決して一つの場所に留まることのない、彗星。
作品データ
コメント数 : 4
P V 数 : 1871.4
お気に入り数: 2
投票数 : 1
ポイント数 : 6
作成日時 2021-11-08
コメント日時 2021-11-11
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 2 | 2 |
総合ポイント | 6 | 6 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 2 | 2 |
総合 | 6 | 6 |
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2024/11/21 22時46分57秒現在
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涙した。 目を閉じてただ、その彗星の清らかな光を見ていたい。
0YUMENOKENJIさん、コメントありがとうございます。この詩はある詩仲間に捧げたのですが、涙を呼ぶような作品になり良かったと思っています。彼女も笑顔で喜んでいることでしょう。
1stereotype2085さん すぐにそうなのだとわかりました! 清らかな魂の詩を、その方の心を、これからも大事に生きていきたいと思いました! レスにご返信くださりありがとうございました。
0YUMENOKENJIさん、再度のコメントありがとうございます。大事にすること。それはとても大切なことだと思います。
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