爛々と、燃える焔がある。
焔はただゆれながら
あたりを燃やしつくそうと眺めている。
そのよじれた身のうちでは 黒く焦げた家々や
山のようにつまれた骨が
ゆるやかに崩れていく。
いつからだ。
いつから燃えているのだ。
雷鳴のひびく夕暮れや
文明のはじまりに薪をねぶった夜、
都市を歴史に変えた日。
そこから 燃えているのか。
焔。
灰燼のさなかでなお精気づくもの。
焔。存在のあるところに
はじまるまえから輝いているもの。
焔。文明の夜をきりひらいたもの。
両具のからだをくねらせ 堕落をささやくもの。
だが焔は
もう燃やすものはない とばかりに
しずかに、囲炉裏によこたわっている。
しずかにねむっているように見えて
焔は、飛び入った羽虫に
流し目をくばりながら艶やかにさかる。
延々と、燃える焔がある。
鎖にしばられたプロメテウスや
ソドムとゴモラの永遠の罰。
イザナミを弑した赤児。
これらすべてをもたらした
焔、焔、焔。
焔は
星のおおいなる虚をとおって
いまや あらゆるものを
燃やそうとしている。
だが、そこへといざなわれてしまうから
生けるものは傲慢である。
あらゆるものが
白き灰となったまぼろしをみる。
ただ焔だけが
一つの叫び声にゆれている
まぼろしをみる。
わたし は 燃える。
わたし が、
わたしという傲慢が
ただ あかあかと
燃える。
作品データ
コメント数 : 6
P V 数 : 1485.6
お気に入り数: 1
投票数 : 1
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作成日時 2021-11-03
コメント日時 2021-11-09
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 1 | 1 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 1 | 1 |
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2024/11/21 22時51分47秒現在
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雷が落ちた時、その繊細な優しい光に肌、体中を詰められ、至って自然的な“ようふく”に馴染ましさを覚えてやまないことから、長い長い着物の帯の丈を知るのです。その時そのとき、スタイルに叶った且つ変容し得ない美意識に対して、感じるいつくしさに、自分にはこの上は無いのだと釈尊の気持で我も輝きます。この詩の燃えている火の感想として。最終の、「わたし」と、「傲慢」とが揺れる様な佇まいで美しいです。
0詩的な感想ありがとうございます。わたし、というものが揺れているような感覚で書きました。
0焔の歴史が燃えて居る様な、人類の神話が燃えているようなそんな感じがしました。最終連が印象的ですね、わたしと言う傲慢。わたしそのものが燃える。公と私の一体感があるのかもしれません。
0火は始まりにあって、さまざまな比喩として用いられます。わたしはよく、自らの意識が燃えているような、そんな幻視(クリシェではありますが)を見ます。 コメントありがとうございました。
0焔が擬人化されている表現が印象的ですね。 テーマも深く、声に出して朗読しても素敵な詩だと思いました。
0音読であまりつまらないように意識して書いたつもりだったので嬉しいです。焔は色々なものを想像さしてくれますよね。 コメントありがとうございました。
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