『無量のて、あしの為に』
九月の死んでいるか死んでいないかの蝉時雨がまだ聞こ
えている だから昨日の蝉の死骸は きっと淡い竜骨の
嘘だった 本当に死んだ樹木が 腐乱死体を飲み込み夏
が充実していた その蝉時雨は最初から聞こえていたの
に 無量の手足のために 規格された土星の周回軌道を
散り散りにしている それは本当のことだ 雨のなかで
大勢の勝ち名乗りをミキサーにかける 樹木の敗北に消
去できない蝉がとまる それもこれも本当の九月だった
のか 九月の死んでいるか死んでいないかの蝉時雨は破
れた砂の胃液に溜まっている 本当の夏は本当に消去さ
れてしまって だから昨日の蝉の死骸は 明日の蝉の蒸
発でもあっただろう
夏の靴の破れた温度を渡っていく
蝉は何匹死んだ、今日何匹死んだ、
昨日はどんどん暑かった。
これは何の破れ目だろうか
樹。流れてしまっている蝉は一体、
何匹死んでいく。樹の、
隔たりに憑依して、樹の、
狼狽に癒着して、
夏の靴の被れた平行を渡っていく
蝉は純粋な感覚の通りになる
何匹死んで、今日また何匹死んで、
蝉は単調な段落の進みになる
何匹も乾いている、何匹もとけている
夏の破れた容器に散乱散乱、
夏の被れた磁力に拡散拡散、
夏の靴の塗れた全貌を渡っていく
蝉は死んだ、樹木の比例に添いながら、
ずっとずっと死んでいった。樹の
吐き気に同期しながら、どこまでも、
どこまでも死んでいった、
本当のことだ。
(無量のて、あしと風を切る象牙の闘いに歩
けないのは乾いた恋慕が減数分裂を生きてい
るからだ無量のて、あしの為に長い頭痛の窓
を抜けていかなければならない重力の蝉と優
しい移動の距離を測るという肉親が夏に進ん
でいくことよりも重要な捻れ方をしているの
にわたしの歩行は爬行にも転じないまま哺乳
瓶を突っ込まれてあからさまな氷菓に吊り下
げられている無量のて、あしのようだ尚も屈
しないわたしの内膜がネオンを逆流させてい
ることへと操作なのか自爆せよ固形化する影
の漂白に架けられた導線にも無益な滑走路を
走っていくこと順接のそれさえ無量のて、あ
しの為に殺害の陽子へと限られている)
孤独な血走り方を想う、
孤独な血走り方を想う、
わたしは血走らない、蝉のように
線が胴に巻きついて、
描画の縦を巻きついて。
巻きついてる、巻きついて
る、鳴いている。蝉がだ、
虚ろな甘味料に着色されながら。
線が胴に、描画の縦に、
巻きついてら。蝉鳴いてら、
てらてら。小鳥が燃えながら絶叫する
絶叫しながら勉強しましょう。
小鳥が溶けながら絶叫するのだが、蝉鳴いてら、
勉強しなさい。孤独な血走り方を
想いなさい。線を胴に巻きつ
けなさい。血走りながら描画の縦
に成長しなさい。蝉のように
わたしは血走らない
孤独な血走り方を想うのか、
無限の孤独な血走り方を想うのか、
絶叫する蝉の何匹だ、鳥の何羽だ
わたしは崩れる方向へと血走り始める
わたしは崩れる、白日の勉強を想う。
崩れて血走らない蝉のように
無限の孤独な血走り方を想う。
九月は死んでいる血流と死んでいない粘液で回り続けて
いる 犬歯のある風景を孕み 運命の蝉は脱皮を繰り返
している 本当の果実が 狂った塩分を無意味に救出す
るのは 確実な蝉の溶液が何処にでも建設されるからな
のか 減数分裂すら乾く水分 皮膚の死はそのままで脅
迫の死へ 本当の樹木が倒れ 無量の手足が崩れる単純
な場所 隠れたミキサーが曼荼羅の飢餓を降らせるだろ
う 本当の樹木は本当に倒れ 幼い蝉の成分から伸びて
くる跫音を迫害した 近づいた揚力の鳥を殺し 無量の
手足のために 掌握された枝に蝉を串刺していた 熱を
帯びて水没する鳥の筋肉 近づいた 破滅する血液と蒸
発する粘液で 死んでいる九月は 死んでいない九月の
亜熱帯は 無意味に救出され続けている
作品データ
コメント数 : 4
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お気に入り数: 0
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作成日時 2021-10-08
コメント日時 2021-10-20
#現代詩
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2024/11/21 23時29分19秒現在
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いいと思います。しかしどう評すればいいのか分からない。昔「天才たけしの元気が出るテレビ」でシュールな詩人という、シュールな詩を即興でよみあげる素人詩人さんの肩に、高田純次が芝犬を乗せたり、亀でその方の顎を噛ませたりするコーナーがあったのですが、あの時の高田純次やたけしさんより僕は残酷でもなく紋切り型でもないということが分かりました。少なくともこの一読しただけでは何を書いているのか分からない詩に、何らかの詩情が通底しているのだけは分かりました。読後感もよく心地よかったです。この詩の背後に何があるかは読者一人一人が想像して楽しむものなのでしょう。
0ていねいな描写だと思った。
0音楽を感じた。 でも読み切れませんでした。すみません。
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