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金管楽
鍾乳筍は蒸留瓶を 嗄れた人夫達の肥満体を 眠れぬ夜また 醒めぬ昼を 具象物辞典を 棚に収める 手首、祈念の容に泛ぶ彫塑の膚へ 這う蛾蘭の、 声の為に死ぬものは誰か 私か 鎮静剤の散ばった神経‐人体を 一廻廊の終始を繋ぐ 総ての額縁には 脆いトルソの鳩の巣が 裸体の裂傷に設えられる 鐘が鳴る 狂人の夢にも 果樹の喩えは縺れた線を画き 幼児期の蝶の醜い羽化に透通るポラロイド紙を転写してゆく 祈願された旱は 処女航海の泥濘に靴を奪われ 垂涎の滴る鍾乳筍の奧処に潮汐を呼び 智慧には翼を 群衆には力を 瓦礫に拠って建築をした ・ 不可視の死に身罷る 濫觴‐幽冥 指摘の花が爛れ 甲殻の擬声は恐慌を喚く 白頭から線維に到るまで 硬化拘縮して行く運命監視 蝶番 標本の展翅箱 善悪は矯正教育の貌を 円塔‐遠近に経過せしめ、 純血学乃ち 優生学をふたたび教条に混入する 曰奴隷国家 巨躯の眼球‐気球 復陳腐にも 映像投影機に舫う一群の雁音 頸切の華の楽譜にそぼふる夏雹は 濁濁たる血族の喇叭を吐け 吐瀉物の妙なる粥の音 純粋機械工学の恩寵は乃ち人間を象る 釘の渺雨 模倣像は肉体と均しく 精神病院から鳩舎を亙り 救済としての 火砕流にまざまざと濁り遣らぬ眼底出血 : 検死医に切刻まれる穹窿から通り魔の美声に至るまで一切、虚実は滅びゆくべし
金管楽 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1346.2
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2021-09-25
コメント日時 2021-10-01
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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技巧 | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
難しくて、漢字を幾つか調べながら読ませていただきました。漢字の宝石の象嵌のような印象のあなたの難しい詩ですが、義憤や苦い認識、嘆き、を感じました。例えが凝縮があるためふんわりとしかわかりませんでしたが、ごめんなさい、 頸切の華の楽譜にそぼふる夏雹は 濁濁たる血族の喇叭を吐け 、 この一文はかなりきれいです。また読ませていただきますね。
0ご講評を賜り、允に嬉しく存じます。 語彙に隔たりが在り、復造語癖もあるものですから、随分、読み難い作物となって仕舞いました。 (因みに蛾蘭とは、胡蝶蘭を指して命名させて頂きました。中華に於きましては蝶に喩えられる此の植物は、欧州では蛾に喩えられるのだそうです。) 可読性と個人的趣味の間に、いつも葛藤を覚えております。不出来な作品ではございますが、些かでも愉しんで頂けましたならば幸いでございます。
1正直、内容をすべては理解できないのですが、この詩を「金管楽」とされたそのセンスとパワーに圧倒されたので1票入れさせていただきます。確かに木管や弦の世界じゃないんですよね。 ちなみに、鷹枕可さんは、タイトルを決めてから詩をかかれますか?それともタイトルをつけるのは後でしょうか?すみません、少し興味があってうかがってみました。もし、よかったらお教えください。
0ご講評を賜りまして、心より嬉しく存じます。 作者自身にしか読めない詩、それは自己満足にしか過ぎないのかもしれませんが。些かでも某かが伝わりましたなら。 因みに、題名は最后につける事が殆どでございます。
0慎重な読みが必要な詩だと思いました。濫觴、幽冥などの熟語。垂涎の滴る鍾乳筍など。特に鍾乳筍、二回ほど出て来るので注目しました。独特の言葉遣い、火砕流と繋げられた眼底出血。滅びゆくべしと言う断定が残響しますね。
0題名の件について、お答えいただきありがとうございます。 あらためて、素晴らしいタイトルだと思いました。 鷹枕可さんの作品の世界、興味深く、これからも読ませていただきたく思います。
0御目を通して下さり、允に嬉しく存じます。 所詮、自分の作物は。個人趣味的な世界像を現出せしめんとする、虚無の遊戯に過ぎないのかも知れません。 綺語への飽くなき憧憬が、文体面に於ける単純機構を支えることに拠って、如何にか「詩」に近似した構造を呈しているのでしょう。
0ありがとうございます。ご期待に応えられる様に、これからも研鑽をさせて頂きたく存じます。 (とは言え、近頃は随分寡作に成って仕舞いましたが。)
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