ゆるやかに差し込む陽
朝八時。一週間ぶりによく眠れたようだ。猫と一緒に
伸びをする。目覚ましで叩き起こされないって、なん
て良い朝だろう。
作業部屋に入ると、テーブルには昨日漁った大量の資
料が散らばっていた。開いたままのパソコンに、メモ
だらけの予定帳。勉強用に買った本が無造作に積まれ
ている。それらに焦点を合わせないようにしながらヘ
アピンを取り、リビングに向かった。電気が点いてな
かったせいだろうか。鈍色の背景に、直線の輪郭を描
いただけの空間に感じた。
目の先の
よそゆきの前髪が邪魔なので、ヘアピンで留める。
リビングに入り、ぐちゃっとカーペットに寝転ぶ。と
ろんとした目で部屋を眺める。窓の前に置いた緑や木
製の家具はやさしい朝陽で照らされ、ブルーライトに
侵された私の目を癒す。廊下からひょこっと猫が出て
きて、陽で温まった所に寝転ぶ。ずるい、と私も猫を
抱くように位置を変える。体毛が私の皮膚をくすぐ
る。その肌触りを求めて、なだらかな曲線をなぞるよ
うに、つい猫の背中を撫でる。
暖色の空間。メリハリのない、淡いような空間。
こっちの方が、ずっと心地よい。
猫の体に顔をうずめる。
このまま、重力に身を任せていたいなぁと思う。
「ねー、きなこ」
鼻の先の
きなこ色の体毛は
陽で輪郭を失くして
キラキラ光ってる
作品データ
コメント数 : 6
P V 数 : 1215.9
お気に入り数: 2
投票数 : 0
ポイント数 : 17
作成日時 2021-09-25
コメント日時 2021-09-27
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 6 | 6 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 6 | 6 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 5 | 5 |
総合ポイント | 17 | 17 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 6 | 6 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 6 | 6 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 5 | 5 |
総合 | 17 | 17 |
閲覧指数:1215.9
2024/11/21 23時06分19秒現在
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「鈍色の背景に、直線の輪郭を描いただけの空間」 「暖色の空間。メリハリのない、淡いような空間」 という仕事と休日との対比がよかったです。 その間で、「よそゆきの前髪が邪魔なので、ヘアピンで留める」が、 日常的な、生活感のある動作ですが、 空間が変わるためのひとつのスイッチになっているのもよかったです。
1コメントありがとうございます。僕の使った技術をまささんに大体解説されてしまいました(笑)。今回対比は多く散りばめてあるので気づくのは容易だと思います。しかし、ヘアピンの所は作者の視点から見ないとなかなか気付かないと思うのですが、流石まささんです。毎回評価してもらえて凄く嬉しいです。励みになります。
1人間味があってとてもいい詩だと思いました。 詩の中に生活感が漂っているのが好きです。 まささんのコメントを読んで「へぇー!!すごい!!」って思ったのはナイショです笑
1コメントありがとうございます。細かい所に注目しなくても、「とろん」とか「ぐちゃ」とか「ひょこっ」とかの可愛らしい擬音語で、この空間のぐうたら感やロカさんの言う生活感みたいなものを表現したつもりです。今回は挑戦として、あえて散文的にし、それらの表現を際立たせることも試みたのですが、その効果があったのかどうか少し不安ですね。なんにせよ、生活感を読者に伝えることができて良かったです。
0前髪をヘアピンでとめるところが生活感があっていい。神は細部に宿る、ですね。お話はディティールが大事。あと、きなこ、と最後の一連がいいですね。
1コメントありがとうございます。最後は、この詩を前向きに締めくくれるような風景にしたつもりです。よかったと言ってもらえてとても嬉しいです。
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