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断絶とめぐり合い
白夜のもと水平線をチラチラする光を感じながら、浜辺をつらつら歩いている。 波の音に耳を澄ませ、チャプリチャプリ、さらさら、遠くで轟々、といろいろ混ざっている。 ちょっと頭を逆さにして、股のあいだから海を覗いてみた。 海のした、空には足場がない。 そして雲のした、青の向こうで暗黒が口を開けている。 海の青と空の青、波が滴り落ちて混ざり合う。 その波がぐんぐん迫りざぱあっと顔を飲み込んだ。 空と海の境界がなくなり一つになったとき、そこで溺れたとき、どこで息を吸えばいいのだろう。 海面はどこだろう、足をつけるべき地はしっかりそこにあるのか、確かな平面ってなんだろう。 そもそも今、肺を満たしているのは水か風か、空虚か。 息苦しい、もっと深く息を吸わないといけないのか、それとも今吸っているものが間違っているか。 渡り鳥を探す、きっと答えを知っている、極北と故郷の場所を教えてくれる。 そう思ったが追いつけない、空も海もわからない虚空をなぜああもまっすぐ飛べるのだろう。 同じ光景を見て帰りたいと思った。同じ空のもと飛びたいと思った。 でもできない。 彼らも実のところ知らないのだ。 同じ白夜に照らされていながら、私の見る混沌が,彼らには海上を駆ける青嵐がただただそこに見える。 見えるはずのものを私が知らないのではない、そもそも私と彼らとは違う感覚を持っていて、違う小宇宙を自ら の系に持っているのだ。 だから、 この息苦しさも肺を持たす空虚な水も私のものだ。 水面を求めなければと、もがく必要はない。その深黒の中にあって私は充足している。 空や地は確かにあって、でも私の空想に過ぎない。 かすかに感じる超臨界流体の潮流に沿って歩くとも泳ぐとも言えない形で進む。 ふとツバメが飛んできて、軒下に巣を作った。ひとときの間ともに暮らした。
断絶とめぐり合い ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1146.2
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 32
作成日時 2021-09-04
コメント日時 2021-09-20
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 9 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 7 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 8 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 8 | 0 |
総合ポイント | 32 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 9 | 9 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 7 | 7 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 8 | 8 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 8 | 8 |
総合 | 32 | 32 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
沙一さんありがとうございます。最低限,その超現実の光景が伝わったようで安心しました。哲学の沼にはまっていた時期の作品で,絶対的価値観がない中で迷ってばかりの自分に対するものです。他人の道をうらやむばかりでなく身の程を知りましょう,他人とは無理に距離を置く必要はなくて時には道が重なって楽しい時もあるよ,そんな意味合いで書きました。今はこの超現実を日常につなげなきゃなあと思っています。 空白については,実は散文のつもりで書いていたわけでなかったのと,PCで書いていたせいか空白が見やすい気がしたというのがあり,今後気を付けます。ご指摘ありがとうございます。
0上記,沙一さん宛です,申し訳ありません。
0「水面を求めなければと、もがく必要はない。その深黒の中にあって私は充足している。」 この一節が印象に残りました。 人は、なにかを求めると、むしろ遠ざかっていく、 人に必要なのは、気づくこと、認めること、であって、 それではじめて前へ進むことができるのではないかと、 考えさせられました。
0まささんありがとうございます。私も気に入っている一節です,その一節にたどり着くように書いた作品かもしれません。おっしゃる通りで,等身大の自分を認めないと日常や感情をうまく詩には載せられないなという問題意識から描写しました。
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