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生のよろこび
私は猫を飼っていた。 今年の六月に死んだ。 死ぬ前日、ミルクを与えると、 今にも動かなくなりそうな身体を引き摺りながら、ミルクへと舌を伸ばす。 生まれてよかった、という感覚は、 どこから生まれてくるのだろうか。 最近、反出生主義という言葉を知った。 生きるのは苦しいから、痛みを感じるから、 生まれるより生まれないほうが良い。 そういう考えもあるだろう。 ただ、それは生まれる以前の話であって、 現に生まれている私たちはどうなるのか? 飼い猫が死ぬ間際でみせた行動。 私は、そこに理屈や論理では語れない、 生への肯定をみた。 私の猫はもう辛かったのだろう、苦しかったのだろう、痛かったのだろう。 それでも生きようとした。 生きているものにとって、生きる、ということがどれだけ辛かろうが、苦しかろうが、 生きることの肯定とか否定のまえに、 命の側からは、生きることは計測可能であって、生命にとって生きることは肯定であり善なのだ。
生のよろこび ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1113.8
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作成日時 2021-08-05
コメント日時 2021-08-08
変に言葉をかけるのは良くないと思いますが、生きるということをすごく優しく、精一杯見つめていて、素敵な批評だと思いました。わたしなりに、の生きることへの前向きな気持ちをすごくまっすぐに受け止めたんだろうなって、ぜんぜんほんとはどうなのかは知らないけど思いました。
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