狐の面をかぶった男が連れだすのは痛みのない電脳空間で。さらけ出して。誰もが現実とはかけ離れた場所で祝砲をあげていくの。ずっと笑って踊り回る。壊れていくビルの屋上には外套をひるがえす暴力の男が。割れた硝子の破片に映るあそこの狼もきっと一人ぼっちだ。生身の体で何も楽しめないのなら、死のない場所で脳の花弁を開け。昨日の教師の言葉をポイ捨てしてノートを炎で燃やし、極彩色をまとうエイの背中に乗っていく。右手に咲き乱れるのは名無しが運んだケシの花。二面性の殻を破り、覚醒したメロディを一緒に歌いながら溺れだして。暗い夜空にあがった一億の花火を仰ぎ見て、めまいの舞踏を踏み鳴らせ。悩ましいほどに。
途絶えない 音
解き放たれていく 矢
響く 号砲
加速するのは歓喜
サーカスさえエンターテイメントショーでさえ、今痺れだす君の脳細胞の前では敵わない。予定は破り捨てて鞄と一緒に海へ沈めて。踏み出すのは黄金の郷土だから、決して振り返らない。握りしめた手が離れてもその目を逸らさないで。君の小さな個室で倒れたカップヌードルも、零れだしたファンタも床面に放っておけ。重力をなくした感覚だけが信じられるすべて。体はもういらないから性差も名前も今さら関係ないね。エイの翼の上で跳ねまわり、怯えた火星の赤子を喰らい尽くす。
音符を並べたディーヴァが歌う場所で自由を知って、すぐにもふらつき出しそうだね。迷子のままでいた時代と手を振ってさよならするその瞬間。蕩け出す狼も悦んでいるの。野放しにされた暴力も愛人に抱かれたまま楽園へ。汚れることのない場所へ。所詮ネットだなんて白けたセリフも君と僕をつなぎとめる、らせん状の新しいルールだね。
/かってうれしいはないちもんめ
まけてくやしいはないちもんめ/
おなごの行き先は電脳遊郭だと彼らは囃し立てる。
笑う奴らには笑わせればいい。
デスマスクの下の皮肉や嘲り。
身体を落としてしまっても
本能に付き従うのが避けられないのならば
振り向かずまばたきさえしないで
雑音を振り払って踊り続けて。
/かってうれしいはないちもんめ
まけてくやしいはないちもんめ
俗世を売ったあの娘は何処へやら/
作品データ
コメント数 : 4
P V 数 : 1330.4
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 7
作成日時 2021-07-27
コメント日時 2021-07-29
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 3 | 3 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1 | 1 |
総合ポイント | 7 | 7 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0.5 | 0.5 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1.5 | 1.5 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0.5 | 0.5 |
総合 | 3.5 | 3.5 |
閲覧指数:1330.4
2024/11/21 23時36分00秒現在
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沙一さん、コメントありがとうございます。電脳空間と和風情緒という組み合わせは、音楽の世界でも映画の世界でも実を結んでいることが多々ありますよね。古いところではケンイシイさんの「extra」のPVとか、ブレードランナーの映像美とか。僕がこれから着目したいのは今あげた二つよりも、もっとファンタスティックで夢のある前向きなものですね。今回はまだ振り切れなかった面がありますが、散文と詩行の関係と共に沙一さんから好評をいただけて手応えを感じています。テクノロジーと和風情緒って合いますよね。それにあとファンタジーが加わればとも思っています。
0狐の面などの和風ティストと 電脳空間の組み合わせから、サマーウォーズという映画を思い出しました。あの映画では、電脳空間とリアルは 古民家に住む家人々を介して がっつりと結びついていました。この詩の場合は、電脳空間によって構築された巨大な世界に読者を誘おうとする話し手を感じました。 その様子は、まるで 悪い妖怪のたかり
0つづき。(スマホ調子が悪くて、送信になった) 妖怪の 語り。だと、おもいました。これは、納涼だと感じました。
0るるさん、コメントありがとうございます。サマーウォーズ、いい映画でしたよね。夏希ちゃんが電脳空間にて花札で勝負するシーンが印象的です。あの美しさとノリそして威勢の良さ。この作品にも反映されているかもしれません。電脳空間の巨大な世界というのは最初から意識していて、そこでの扇動者?としての語り手という構図は出来上がっていたのです。悪い妖怪の語り。いいですね!この作品、初めは「アジテート」という仮題だったんですよ。ですがそれでは余りに露骨だったので終盤も含めて謎めいたものに変えました。納涼。まさに、ですね。
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