明日への行列 - B-REVIEW
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ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



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明日への行列    

どうしても僕たちは行列を作ってしまう 時間は横に進むものなのか 昨日には、今日への長い行列を作った 今日への入場を果たした僕たちは今日も、 明日への長い行列を作って並んでいる 昨日は今日と双子のようで 今日は明日と双子のようであろう ただ少しの成長が、前後二日の間に差として見られるだろう また、新しく、滅亡や誕生も見られるだろう 彼女とくっ付いて 行列の中に僕は何か満ち足りているような気持ちで並んでいる 弱い風が、行列の隙間を静かに吹き抜ける 寒い、と彼女が言う これくらい、我慢しないといけないよ、と僕は言う 或る長閑な駅に、電車の本数が少ないのに似て 僕と彼女との間には、話すことが少ない でも僕と彼女とは、この掴み所のない行列において、 互いにとって道標だ 行列は少しずつ進んでいるようだが 今はまだ昼、入場の見込みは立たない 白い空の下、時刻情報を受信しながら みんな時間を捨てているかのよう でもこの余暇にこそ、人間の営為はある 僕も何か 進歩することに倦んでいるわけではない そこに強い風が、地下鉄のように静かに走って来て 仕舞い忘れて指の中に持っていた僕の整理券を飛ばしてしまった 僕は彼女をおいて行列から外れ 整理券を追いかけて走る 風の跡が取り返しのならない模様を描く やっと風が、地下鉄が止まるように静かに止まる 整理券が、落ち葉の中に止まる 行列からはもう遠い 彼女の姿も見失ってしまった 僕の心は急速に行列のことを忘れ またも起こる風が行列の記憶の熱を冷まして ただ明日への整理券だけ掌中にある 券面に印字されている大なる数字が、僕の存在の証だった 大袈裟だな、と思う 僕はもうあの行列の中に生きない だからこの整理券を、地面に捨てた どんなに無思慮に発言したり行動したりしても、 常識の範囲を出ることなく無難に済む人間がいるのだろう 僕はそういう人種ではなかった 僕は一株の樹木になり 縦向きに未来へ伸びる、 付き随うものは自己の他にない いずれ果ては切り株という運命かもしれない 梢から見渡すと、うっすらと見える 明日への行列に並びながら、人々が時間を捨てている 捨てれば捨てただけ人々は前進する 人々は持てる光を最小限に絞っている、 故にそれほど深く傷付くことも傷付けることもなく


明日への行列 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 0
P V 数 : 1051.4
お気に入り数: 0
投票数   : 0
ポイント数 : 27

作成日時 2021-07-13
コメント日時 2021-07-13
#現代詩
項目全期間(2025/04/10現在)投稿後10日間
叙情性55
前衛性22
可読性55
エンタメ33
技巧55
音韻22
構成55
総合ポイント2727
 平均値  中央値 
叙情性55
前衛性22
可読性55
 エンタメ33
技巧55
音韻22
構成55
総合2727
閲覧指数:1051.4
2025/04/10 04時22分15秒現在
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