フィラデルフィアの夜に XXⅤ - B-REVIEW
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ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



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フィラデルフィアの夜に XXⅤ    

 フィラデルフィアの夜に針金が芽吹きます。  車が行きかう道の側。 廃墟となった小屋。 そこに、誰もいると知られていない驢馬がいました。 なぜそこにいるのか、驢馬がしゃべれない以上わかりません。  ただ、年を取り病にかかり、飢えていました。  地面に寝そべり、ただ時間が過ぎるのを待つだけ。 もう何日も、何週間も。 声も挙げず、ほぼ動かず、虚空を見つめています。 前に出している、右前足を見つめます。  夜の薄明かり、毛並みの色彩が、変わる。  前に出している右前足。 その体毛が、鈍く光り出す。 その前足は輝く体毛と共に形を、姿を変えていく。 足先から少しずつ紐の様にほつれていく。 螺旋を描き出しながら、右足が針金へと変わっていく。 そしてその姿を次々に変えていく。  普段感じていた痛みが消えると共に。  よく分からない形、初めて見る何か。 針金が輝きながら地面を這いずり回り、次々に驢馬の前で姿を変えていく。 時に覚えている誰かの顔を取り、懐かしい世界が現れる。 遠い記憶を時に呼び覚ましながら。 かつての想いを味わいながら。 右足は変幻自在に動き回る。  そんな右足に勢いが付く。 その拍子に驢馬の体が、より広い方へと引っ張り出された。 見ると、薄明かりに沃野が広がっている。  右足の先から、自分の体から、豊かな野原が生まれている。 子供のころ走った、あの世界が。  銀に輝く、草が芽吹き、花が咲いていた。 驢馬の周りに、新たな世界が広がった。  朝。 もう、あの沃野は消えていました。 でもあの驢馬は立ち上がる事ができていました。 驢馬自身、もうあきらめていた足に力が入り、痛みをこらえながらも歩きだしました。 人目に付く事でしょう。 それが良い事になるか悪い事になるのか。  驢馬はまたあの沃野を見る事ができるとどこか確信しながら、朝日の中を歩き出しました。


フィラデルフィアの夜に XXⅤ ポイントセクション

作品データ

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P V 数 : 861.1
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作成日時 2021-07-13
コメント日時 2021-07-13
#現代詩
項目全期間(2025/04/14現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
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2025/04/14 00時23分45秒現在
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