蝶になるきみのX - B-REVIEW
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ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



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蝶になるきみのX    

いつものように きみの部屋を訪ねたとき きみは消えていた。 サナギから蝶になる瞬間に  ぼくは立ち合い 渦巻き回転する時間があって きみは蝶になった そして 蝶になったきみは ぼくのもとから 飛び去って行く。 蝶になるきみのⅩ 叫び声は聞こえなかった。 きみは青いジグザクのイメージだけを残した。 ただぼくがぼくであるためにやってみたことは スマホ画像を過去から順に一つ一つ拡大して きみを見つめなおすこと きみを削除すること。 蝶になったきみのⅩ 隠れ潜んでいる蝶になるまえのきみのⅩ ぼくは寝苦しい夜に 何度も目を覚まし 何杯も 何杯も きみの夢を飲み干す。 スクランブル交差点を急ぎ足で渡ると あの時のきみの笑顔が見えてくる。 ぼくが時を巻き戻すことができるなら あの夏を呼んでみたい。 季節と 輝く約束を交わしていなくても 夏草の繁茂するあの夏を呼んでみたい。 きみと行った植物園のミズバショウ池に いまでも記憶とともに浮かんでいるぼくは じっと前を見つめ そっと息をする。 きみはまだサナギで 風のそよぎも、肌を濡らす小雨も忘れて ぼくの横でぼくの腕をつかんだままだった。 夢の中できみの声は 渓流を大岩壁にぶつかるまで昇り 砕けて白い沈黙の波となる。 サナギから蝶になる瞬間  交錯する薄明とジニアの甘い蜜の香りが きみの身体の中で入り乱れる。 きみが星を忘れている昼間でさえ 星は遠くきみを見つめていた。 心拍音と静寂と、明日への扉の開閉音が 植物園の館内アナウンスの後に小さく流れる。 らせん状の口吻を伸ばして 後ろを振り向くきみ 慣れない翅をひろげて きみは飛び去っていった。 きみは忘れている 人は人が語らないことで 救われることがあることを 人は人が語らないことで 傷つけられることがあることを 後ろを振り向くきみ 蝶になるきみのⅩ



蝶になるきみのX ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 0
P V 数 : 1199.3
お気に入り数: 0
投票数   : 0
ポイント数 : 5

作成日時 2021-07-02
コメント日時 2021-07-17
#現代詩 #縦書き
項目全期間(2025/04/14現在)投稿後10日間
叙情性20
前衛性00
可読性10
エンタメ00
技巧20
音韻00
構成00
総合ポイント50
 平均値  中央値 
叙情性22
前衛性00
可読性11
 エンタメ00
技巧22
音韻00
構成00
総合55
閲覧指数:1199.3
2025/04/14 18時21分27秒現在
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    作品に書かれた推薦文

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