海はひろい

やる気ないほら、やる気ない気持ちわるいのに腹は減る風邪ひいた気がするだけいたって健康です遅刻しそうだいそぐ気持ちはない走りたくありませんぼくはわざと乗る電車間違えて海まで海ながめて疲れたら帰るほんとうは海なんか見たくない遅刻してすべて嫌になったら海に向かえばいい、と本に書いてあったひろい以外の感想が浮かばない海夜になったら波は黒くなってぼくは水が苦手だからきっとこわいひとりでしりとりをしよう退屈でやることもないから浜辺に座り込むそれらしい中学生がいる水色のサイダーを飲んでいるまぶしく見えたけど三人のなかのひとりは声がデカくてうるさかったあの子たちはやくどっかいけばいいなと思ってわざとらしく白目を剥いたりしてさらに、カッと口を開けて大声を出すフリしてみたぼくはいま遅刻してるし海までやってきたもう、どこにも行く気持ちはないこの場所からしばらく動けそうにない家への帰り道を思い浮かべるとカレーの匂いがする、なぜさっきから鞄のなかで大きめの虫が震えているなと思ったら怒っている人からの不在着信だった虫も嫌いだけど怒っている人はもっと嫌い虫であれば潰して砂浜に捨てるいつのまにか中学生たちはいなくなって波打ち際を散歩する人がちらほら目の前に海があると悩みは小さくなるけど先の楽しみまでも小さくなってゆくから手で海を覆い隠す海をながめたり手のひらをみつめたり悩んでいるのか楽しいのかぼくにもよくわからなくなりました海にひろい以外の感想はないけどすべて嫌になったときは海に向かえばいい、と本に書いた書いた後で恥ずかしくなって消したそれでもぼくみたいにすべて嫌になってふっと海にやってくる人がいる生きていれば嫌になることがたくさんあるはずだけど海に人が押し寄せていっぱいになりはしないなぜなら海はひろいから

海はひろい　ポイントセクション

作品データ

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作成日時 2021-06-11
コメント日時 2021-06-11

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