朝靄の中散歩をしていて
貴方のことを考えていた
前方は見えづらくて 妙に息苦しい
聴こえるのは
朝方誰かが練習している
ウッドベースの音
貴方は言ったよね
コロナが収まったら
また会おうねって
なのに私が嬉しくないのはなぜ?
私は拒食で不感症
孤独なSNSの落とし子
宙ぶらりんになって
決して子供を作らない根無し草
私は世の中と折り合いがつかない
世間と上手くいかない
親せきのおじさんがくれる
スプライトにも目を背けて
ありがとうの一言も言えないケダモノ
濁った色でまざりあう雲でさえ
遠くへ逃げていく
かわいた喉元が激しく震えて
胃液が口からあふれてくる
もう世の中にはさよならしたつもりだった
もう世間とは手を繋ぐつもりもなかった
それなのに
口から吐き出したのは結局
吐き出したのは
結局
貴方に会いたいという
未練がましい生への執着
姉が送ってきた
コメディエンヌの動画も
今は観る気になれないの
笑う気も 誰かを応援する気も
起きないの
いっそこのまま海に沈むことが出来たら
どれだけ幸せかと思うけれど
私はそんな決断も出来ない
無信仰なただの女性
朝靄が晴れてきて
道を行く園児の姿が目に映る
口にはマスク 咲いているのは野花
コロナが収まったら
コロナが収まったら
ひとつ 一輪の花でも買って
玄関に飾ろう
貴方のことをまた少しだけ
想い出しながら
作品データ
コメント数 : 6
P V 数 : 1447.4
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2021-06-06
コメント日時 2021-06-18
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
閲覧指数:1447.4
2024/11/21 23時01分36秒現在
※ポイントを入れるにはログインが必要です
※自作品にはポイントを入れられません。
読書感想文みたいですが、読後に感じたのは語り手の孤独と苦しみでした。 コロナ禍という私たちにとって未曾有のようにも思える事柄の中で、皆願っているだろう、コロナが収まったら。 もう、挨拶のようになってしまいましたが。貴方は逝ってしまったのでしょうか。花束より野の花なのが印象的でした。
1まず、朝靄にウッドベース、さすがです。 次に、 >濁った色でまざりあう雲でさえ >遠くへ逃げていく こんな言葉をよく引き出せますね、驚きます。 全体からの印象は「端正」、改行も的確、読者への心配りが感じられます。冒険的な性質は濃くはないものの、このような作品はなかなか書けるものではないと思いました。
1橙子さん、コメントありがとうございます。語り手の孤独と苦しみは、この語り手が生来持っていた気質、あるいは病状としての拒食などから察することが出来ますが、何よりも大切なのはこの語り手は僕自身の苦しみを少し投影させた「少女の肖像画」に近いということです。この語り手は僕がこれまでに接した、やり取りした女性複数人をモデルとしていますが、造形として綺麗なものに仕上げてもいます。だからここに究極的な女性の痛み、極まった少女の痛みは存在しない、見えないかもしれないのです。これは僕が書いた「肖像詩」とでも呼ぶものですから、ある程度鑑賞に耐え得る美を備えています。ですが、これほどの切迫と希死念慮のようなものを抱えている女性は、恐らくここまで文脈が整っていないでしょう。そこまで冷静でいられない、もっと爆発したいというのが本音になるかもしれないのです。ですから、この詩は読み手が充足出来るように整えられた鑑賞物なのです。あくまでも。と、ここまで長々と書いてしまいましたが、僕としては読み手さんが少女の肖像画を観るように、シンプルにこの詩を読み、少し少女を心配したり、一緒に辛い気持ちになったりあるいは慕う気持ちが芽生えたとしたら満足です。それが僕の考える「肖像詩」です。本当に長々とお目汚し失礼しました。感謝します。 追記・本当に「コロナが収まったら」は挨拶のようになってしまいましたね。悲しいです。
1yasu.na さん、コメントありがとうございます。yasu.naさんは僕の技術を高く評価し尚且つ「あ、的確だな」と思うことがままあるレッサーさんの一人なので、このようなコメントが貰えて嬉しいです。端正でいて心配りが出来ている、なんて橙子さんへの返信でも書きましたが「肖像詩」を書いた気分の自分としては最高の賛辞です。ありがとうございました。
0詩を読んで、泣きました。 主人公の女性の気持ちが自分と、重なっていくのを感じました。 『私は拒食で不感症 孤独なSNSの落とし子 宙ぶらりんになって 決して子供を作らない根無し草 私は世の中と折り合いがつかない 世間と上手くいかない』の下り、女性の気持ちが具体的に書かれていて胸が熱くなり、鳥肌が立ちました。 今も泣いています。 良い詩をありがとうございました。
0きょこちさん、コメントありがとうございます。そうですね、この詩実はコメントで失敗したと思ってるんですよ。今になると笑えちゃいますが。肖像詩などと言って読む人の興を削いでしまった。ただ単にこういう自分の気持ちとリンクする女性の詩を書きました、と返信すれば良かったと後悔しています。しかし涙が止まりませんか。ありがとうございます。その感受性をありがたがるばかりです。
1