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生身
俺は俺の罪を均すため 児童相談所に連れてかれ 俺よりもいい顔で笑い 俺よりも不憫な人生を歩んだお前らに下呂の吐き方くらいしか教えられない 俺はガキどもに踏んだり蹴ったりされながらそれが愛だと思った 零れ落ちたその言葉に一人が愛ってなに?って聞いた 伝えること 愛してるといって頭をなでると疲れて眠った 俺は荷物をまとめた 不自由な言葉は愛を知らない子供を育てるから 先生の一人が後ろから俺を抱きかかえ そのまま いとも容易くない形で隣の遊具部屋で愛でた 俺の愛は声に出せるほど稚拙で薄ぺらで お前を傷つけること 互いと誰かの想像浮かび下服を履いた 吐きたいが酒すら飲んでない 入眠剤でもいくらかましか 上向きの蛇口を捻る 廊下にはガキが立っていて、お姉ちゃんをいじめるなって とりあえず笑う ハハハとハを強調させた笑い 俺はガキに果物ナイフを渡し、ガキはすぐにそれを握ったからその頬をたたいた 憎めばそれで俺は終わるよ ほら髪が結えていない先生だよ ガキはナイフを床に落とし先生に抱きついた 彼女はゆっくりと其の手を解き、俺をまた後ろから抱きしめた わるいね 彼女と二人で施設を出た 精肉屋でハムカツとチーズチキンカツを買った ガキが握っていた何らかの小銭で 買う行為とは欲求を満たす以外にも成り立つと知った 君は寂しい人が嫌いなのと言ったけど俺は君が思うほど寂しい人じゃなく、それは君なんだと知った 明日のことも、今日のことも話さず、川べりで食った 二人とも一口が小さく、最後の食事は冷めても美味いものだなと語った 目に映るもの 一人ひとりが家路に着き、やがて誰もいなくなった 人がいない瞬間を見ることがなかったので誰もいなくなることを知った 次の空には星があった 君の膝枕で寝ていた 「疲れないの?」 「うん。今日は、今日はこれでいい。明日はあなたが決めて」 あなたはまた目を閉じた 思考力が私にはない ただ膝の上に微温があるだけ あなたの目が開いて、それは温もりになった 膝から頭が、そして体が離れ、私は役目を終えたように仰向けになった 星と微かな風があり5月は好きになれる そんなことを考えていた 幾度かの足音の後 もう一度目を開けて ビールを持つあなたがいた 手を伸ばしもう一度微温に浸る あなたの力は強く 察したあなたは座った あなたの膝に頭を乗せビールが空いた あなたはビールを一口飲むと私の顔も見ないでこう言った 5月ってビールが美味いんだな
生身 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1316.2
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 2
作成日時 2021-06-03
コメント日時 2021-06-05
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 2 | 2 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2 | 2 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
5月は初夏で聖母月で、季節自体がいいのかもしれません、ビール自体よりも。児童相談所は少年院よりはましなのかもしれませんが、児童相談所で愛でられる。得難い経験と言うよりも苦行なのかもしれません。
0下呂の吐き方しか教えられない、てのがまた効いてますね。5月に美味いビールも過ぎればまた吐いてしまう。人との距離感を測るのが苦手で人嫌いな僕には書けない作品だと思いながら読ませていただきました。なんだろうね、とりあえずビールを飲みたいけれどもう6月なんだよな。
0宮田さんの作品、久しぶりですけど、いいですよね。
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