現実の錯乱
今 何が起こるか
不定形な交わりに
求めるものすら
海は赤銅色と人の群れをのみ込む
最後の晩餐に
おとずれる
蒼色の 魂は
ひと度 触れる ことにより
音をたてずに崩れ落ちる
ふた色の首の塊に
身をまかせることも
知らず 乙女の地獄図を
わけもなく取り乱し
確実という言葉の
なぞに つつまれ
一気に吠えつくす
夜の巷に
つぐないとなるものは
ただ岩石の溶ける姿を
見過ごすだけの勇気も
持ち得ぬことに
人知れず安堵と
木造彫刻に
我を忘れたまま
人の蒼 土の緑を
自己の復讐として
絶叫する
生は切れ
情人は流れぬ涙を
快楽と感ずるほど
醒めているのか
まさかの切開は
事実として白砂にまみれ
首吊りの道具と
頸動脈からほとばしる
不浄の体液を
もはや何事も恐怖として感ずる時
今ここに己のいることを
自虐の証として
知る以外にはない
散る花びらの
無残な強姦は
身を苛む時に
初めて黒紫色の快楽
渦を巻きながら
絶命の響きをもって
霊を再現するのだ
混沌として一日の糧は
黄褐色の反吐にまみれ
人の生をぬめぬめとなめつくし
落雷のすがすがしさに
焦燥を感じさせる
宙に漂う生首は
気が ついた ときには
己の もの で あるのか
ここで滅亡への
願望が
我が身へと降りかかることを
心ならずも
溢るる期待とともに
踊り出る
フランソワという男が
語る言葉の塊に
頭骨を打ち砕かれる
その瞬間に
目覚めは
大回転するのだ
ひとりの殺人への懐疑は
ふたりの享楽をよびおこし
息途絶えるのは
常にこの身と
吐瀉物のような
自身を待ち続ける
その時が 月の光に
黒煙が
巻き散らかされる
黒は白への挑戦でしかない
ここへ来て苦し紛れの
処女売りに
交わす言葉を模索する
己を自らの刃で
殺し得るときは
銀色の世界のなかに
すでに放り込まれて
いるのであろう
死は詩に
最も忠実なものである
作品データ
コメント数 : 4
P V 数 : 1165.1
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2021-06-03
コメント日時 2021-06-14
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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可読性 | 0 | 0 |
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技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
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閲覧指数:1165.1
2024/11/21 23時27分09秒現在
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解題「点滴と涙と見まごうほどの常無常に落ちる虚空を」 1970年の秋日 あの日私は確かに旅立とうとしていたのか? 新宿風月堂の2階の椅子に私は座っていた そこが私の数少ない安堵の場所であった ウエイターが運んできた薄いコーヒーを口に含みながら、私は逡巡していたのであろう カバンの中から取り出した小振りの薬瓶の中身を、コーヒーの皿に全て空け 暫くの間ながめていたのだ 何かを決意したわけではなっかった ただなんとなく手が皿に撒き散らかされた白い錠剤に伸び、一粒づつ摘まんでは口へと運んだのだった 隣に座る友人は、不安げに私を見つめていた 一瓶全てを飲み下しても旅立つには不充分だと知っていたのか それともこのまま旅立ってしまっても良いと思っていたのか 記憶は定かではない 暫くして私は息苦しさを覚え、椅子から立ち上がり いささかおぼつかぬ足取りで階下に降りた 店の扉を押して外に出ると、陽の光に目がくらみ、よろよろした足取りで歩き始めた 友人は私を気遣い、私を支えるように腕を取って一緒に歩いてくれた 何を話したかなど覚えているはずもない ただ空しき言葉を並べたのであろう やがて御苑までやってくると 私はよろめくように苑内の芝地に横になって眠ってしまったようだった それからの記憶はほとんどない 御苑からタクシーで自宅まで友人に送られたこと 支えられるようにしてベッドまでたどり着いてそのまま眠りについたこと それらが微かに私の記憶の皿に残っていた 目が覚めた時は、3日が過ぎていた 三日三晩一度も目覚めずに眠り続けたらしい 友人も家人もきっと随分と心配したことであろう だがそのことについては私に何も尋ねるでもなく、触れようとはしなかった 目覚めても本当に目覚めたか疑わしいような日が更に幾日か続いた 混乱する頭の中で、あの日友人に対して無礼な振る舞いをしたのではないかと不安になり 迷惑をかけたことを謝罪し、何か失礼なことをしなかったかと尋ねた 友人は「何か難しいことを一人で喋っていたけど、私には紳士的に振舞っていたわよ」と微笑みながら答えてくれたのだった 更に友人は私への切ない気持ちを吐露した だが私は混乱の海の中に溺れ、その想いに応える言葉を紡ぎ出すことが出来なかった そんな折、私は脳内の異なる回路からおびただしい言葉が噴き出してくるのを感じ カイエの上にペンを走らせたのだった それはまるでSûrréalismeのAutomatisme(自動筆記)による詩作の試みのようなものであった 意識下にあったロゴスが闇の中から顔を出すような感覚に私は浸った
0詩を読んで、ゾワゾワとしました。 今ここに己のいることを 自虐の証として 知る以外にはない、という部分が特に印象的でした。 語り手は自虐的な感情に揺り動かされている。そんな印象を持ちました。 良い詩をありがとうございました。
1きょこち様 コメントをいただき、有難うございます この歳まで永らえ、未だ生のカオスの中で身悶える自らの姿に愕然とします 惑い続け、そこに詩を紡ぐ言葉を見いだす日々がもう少し続きます
1cold fish 様 拙作にお目を通していただき、有難うございます 上記コメントの【解題】「点滴と涙と見まごうほどの常無常に落ちる虚空を」にありますように、若かりし頃の精神の混乱を、Automatisme(自動筆記)によって描いた作品です 何かを感じ取ってくださったという感想は、とても嬉しいです
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