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悪道をいく
流れいく遺体をみている内、死に慣れて仕舞ました。 土塊のごとくズンと重く、丈夫なゴムと似た柔軟な遺体らは、体内ガスのお陰か水底へ沈ま無い。 嘗て、我が家の黄ばんだ浴室で子供用玩具の肌色をした空洞のお人形がぷかぷかしていたのと同じ様で、間抜けに性器を晒した儘ゆさゆさと左手へ進んでゆくのです。 黒々とした乳首 陰毛の濃いもの無いもの 水気で太った性器や尻の様子は、滑稽でありました。 向こう岸に表れた人影に、誰、と問います。顔は此の私に詩を薦めた友、其の人です。 随分長く会わずに居たのに其の人は全然同じ様に見えました。当時の顔や服や髪のまゝ向こう岸に立って居たのです。 其の人はゆさゆさゆく遺体らを見て言いました。「良いね」 小人の遺体をつっついて仰向けに反し抱き上げ、「詩だね」と言い、又流れに戻し、向こうの地平へ去って行きました。 よもや狂気が見せた幻覚の様に素ッと、彼岸花が埋め尽くした果て無い草原の下へ足音も無く消え去って仕舞ったのです。 私は此の出来事が夢か現か判断が付きませんでした。 邂逅の数時間後、其の人が随分腐って右手からぷかぷかして来た時、私は途端目が醒めた様に正気を取り戻し、同刻、意識の中央に黒い大きな印象が浮び上ったのです。 それを、咄嗟にハンカチへ書付ました。 そうして、其の人の胸に、丁寧に折った此の詩を載っけて上げました。 + 1995-2021 Poets Poets was Gone but Not Forgotten Poem.
悪道をいく ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1531.6
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2021-06-01
コメント日時 2021-07-03
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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エンタメ | 0 | 0 |
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構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
これいいなぁ。最後のは、詩人が去った後も詩は遺される、でいいのかな。淡々とやがれゆく死に慣れて滑稽さまで感じるほどに直視するところにそこに至るまでの事を考えてしまいました。タイトルは仏教でいう悪道なのかただの悪路なのか。多分、前者なのだと思いますが、そうすると死後に堕ちる場所で死を眺めている語り手はなんなのか。或いはこの世は地獄と変わらない側面を持つと言われたいのか?まだわからないですが、非常に興味深く読ませて頂きました。
1ありがとうございます。私の表現する偶像をより鮮明に魅力的にするため今後も精進いたします。
0イメージが鮮烈で脳に焼き付くようでした。死体とおもちゃを繋げるところとかはかなり実態のあるイメージが湧きます。 其の人、と作者の関係もちらっと覗き見ることができるようでできないようできになりました。 個人的には小人の死体を抱き上げる描写が、悪趣味さと清浄さが同時に存在しているようで好みです。 古めかしい口調も作風にマッチしていると思いました。
1ありがとうございます。このような不気味さら読者に好まれ辛いのですが、むしろ不気味さに吸い寄せられるような魅力を感じるので、そう言っていただけて幸いです。 そうです。彼は美しい精神性の持ち主です。
0はじめまして。 昔話の地獄絵の様な、 戦争が終わらない悲しい国にいる様な、そんな気持ちになりました。 ありがとうございました。
1ありがとうございます。
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