ヘリが遠方を横切り
煙突からは黒煙
左官屋は鉄を打ち鳴らしている
曇天は去り空は晴れたはずなのに
気はすぐれず ひたすら気丈なフリをするばかり
戦はあった 血が搾り取られカラカラになるほどの
女たちはヴェールを剥がれ
子殺しは祝宴だった
今もまた繰り返されるのは
神を疑う邪気の念
泣いている人はいない 唾を吐く人も
燕は東へと飛び去り
不思議と辺りは静かで
通りを進むのは虚無僧の行軍
情婦のVRが手招きしていたのは
ついこの前だったのに
今では野生の姦淫が当たり前だ
わしは左目が見えない
生まれつきか それとも戦で目玉を失ったからなのか
見たくないものも見てしまったからな
いつの間にか
自分で瞼を閉ざしたのかもしれない
なんだ坊主 お前随分恨めしそうな顔してるじゃないか
こんなわしが羨ましいか こんなわしが妬ましいか
十字架が土くれに逆さで突きたてられるような世の中だ
モノの値打ちがねじれるのも まあしかたねえ
だけどわしに価値を見い出すのも随分無粋じゃねえか
坊主 お前も親なしか
わしも親はいない
いたのかもしれないし いたんだろうが
わしの過去から消されちまった
坊主 ついて来い
これからいいモノを見せてやる
わしの左目に光を灯し
お前の右足を動かせるようにする代物だ
そこらの見世物とはちいとばかし違う
ホンモノがそこにはある
覚悟がひとつ出来たなら
もし今の手持ちをすべて捨てる覚悟が
ひとつ出来たなら
無粋でもかまいやしない
わしの手を
決して綺麗とは言えない 皺で汚れた
わしの手を
わしの右手を取れ
作品データ
コメント数 : 1
P V 数 : 1353.3
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作成日時 2021-06-01
コメント日時 2021-06-30
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 1 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 2 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2 | 2 |
閲覧指数:1353.3
2024/11/21 22時47分23秒現在
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ABさん、コメントありがとうございます。僕としては寓話の中にリアリティを含ませたつもりなのですが、コメントの数等を見る限りなかなか伝わらずまた大げさでチープな印象を抱いた方もいらっしゃったのかもしれません。ですが仰っていただいた通り終盤の昂りは個人的にも非常に気に入っており、次のステップに進むための鼓舞としても必要な作品だったと思っています。拾い上げていただきありがとうございました。
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