夜じゅう降っていた雨があがり
目玉をくり抜いた太陽がやけに
薄気味悪かったから
僕は君を殺そうと思ってたけれど
馬鹿らしくなってヤメタ
看板に鉄さびのあるクレープ屋で
ブリュレを舌に撫でつけ足をぶらぶらさせるも
待ち人は来ず
パブリックビューイングには
もう誰も興味がなくなったサッカーの試合
道ばたに転がるのは40円だけ高い
鬼滅の刃のイラストをあしらったティッシュペーパー
生きている証と言えば
寒々しく舌の上で転がる氷だけ
梅雨を抜けると
体を熱で焼く季節がやってくる
やたら生きろとそそのかす季節が
ネットで読んだ超人Xの一話が
恐ろしく意味分かんなかったから
もう少し生きてみようかと
99%の絶望より厄介な
1%の希望を信じる
僕は半分死んだままの欲望
半分死んだままの情欲
僕は所詮
谷崎潤一郎を好んだ
祖父の血を引く亡霊
ブリュレが底をつけば
ほら見ろ 太陽の目玉さえ蕩けてる
作品データ
コメント数 : 8
P V 数 : 1739.5
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 53
作成日時 2021-05-17
コメント日時 2021-05-26
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 11 | 11 |
前衛性 | 15 | 15 |
可読性 | 2 | 2 |
エンタメ | 5 | 5 |
技巧 | 8 | 8 |
音韻 | 2 | 2 |
構成 | 10 | 10 |
総合ポイント | 53 | 53 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 11 | 11 |
前衛性 | 15 | 15 |
可読性 | 2 | 2 |
エンタメ | 5 | 5 |
技巧 | 8 | 8 |
音韻 | 2 | 2 |
構成 | 10 | 10 |
総合 | 53 | 53 |
閲覧指数:1739.5
2024/11/21 19時54分03秒現在
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”今年はとても早い梅雨入りで、長く続く”というニュースを見ながら、この詩を読みました。あぁ、また暑い夏がやってくるのだなと覚悟めいたものを感じます。 >僕は君を殺そうと思ってたけれど >馬鹿らしくなってヤメタ 「君」についてはこの部分にしか出てきませんが、この詩から滲み出ている厭世観のようなもののきっかけとなっているのかなと。 私はクレープが大好きなのですが、「ブリュレ」と「クレープ」が結びつかず、ググったところ、「ブリュレクレープ」というものがあることがわかり、写真を見ました。キャラメルの焼け焦げた感じが、この詩の中で表現されている「太陽」や「夏」、もしくは「太陽の目玉」にも見えてきて、面白かったです。 >パブリックビューイングには >もう誰も興味がなくなったサッカーの試合 >道ばたに転がるのは40円だけ高い >鬼滅の刃のイラストをあしらったティッシュペーパー 時代に淘汰されたものたち。話者自身もそうであることを表しているような寂しさを感じます。 >生きている証と言えば >寒々しく舌の上で転がる氷だけ これは本当に私の想像に過ぎないのですが、「寒い」「冷たい」=話者の幸せの象徴なのかなと。もしかして「君」と過ごした季節は冬~春だったのかな、等色々考えました。 >やたら生きろとそそのかす季節が 実は私は夏が嫌いです。その理由がこの文章ですべてを表しています。活動的にでエネルギーのみなぎるイメージの夏、ただでさえ暑いのに勘弁してよという気持ちになり、死にたくなるのです。 >ネットで読んだ超人Xの一話が >恐ろしく意味分かんなかったから >もう少し生きてみようかと 読解の参考にしようかと、「超人X」を拝見しました。「???」という感じでしたが、何となく気が抜けて、「もう少し生きてみようか」という思考に移るのが何となくわかる気がします。 >99%の絶望より厄介な >1%の希望を信じる 「厄介な」が強く印象に残りました。リアリティな感情が伝わります。 >僕は半分死んだままの欲望 >半分死んだままの情欲 >僕は所詮 >谷崎潤一郎を好んだ >祖父の血を引く亡霊 ここがタイトルの「首筋に弾丸」にリンクしているところなのかなと感じました。stereotype2085さんの過去作品「祖父の痕跡」でも、祖父は憧れ、希望の象徴のようなものを感じました。しかし、話者は血は繋がっているのに、自分はどこか違う、と感じている。最初タイトルだけ見た時は、「首筋に銃口」ならピンとくるのになと思いましたが、違いますね。既に首筋に弾丸が撃ち込まれていて、話者は死んでいるんですね。ぶらぶらとした足も、幽霊の象徴なのかと。 「ブリュレ」、「夏」、「死」のバランスがとても良く、心地よい詩でした。 ありがとうございました。
すきでした。一行一行の言葉の選択と繋がりが心地いいです。 モチーフや言葉が醸し出す詩情、あるいは詩全体が発する世界観のバランスがとれているように感じました(単に好みとして、私がすきなモチーフがたくさん使われていることもあるのだとは思いますが)。 なんというか、どの時代に書かれてもおかしくない普遍性のある言葉で書かれた部分と(個々で言えば、私はこちらの部分の方がすきです)、詩情はあるが少しチャッチー?だったり今風なネタで書かれた部分が織り合っている感じがして、その効果が、読んでいて不思議でおもしろかったです。
0「夜じゅう降っていた雨があがり」「待ち人は来ず」「梅雨を抜けると」その先に見出すものは1パーセントの希望なのか、亡霊の結論なのか。 「ブリュレを舌に撫でつけ」という表現からは、なんとなく味って全然わからなくて、「買ったから食べている」みたいな雰囲気がしました。 そして物思いのうちに空っぽになっている。これって「生まれたから生きている」ってことなんだなと思いました。 希望なんて本当はどこにもないって言ってるみたいです。
0もこさん、コメントありがとうございます。夏、実は僕は好きなんですよ。ですが事実「やたら生きろとそそのかす」という箇所はその通りであの熱気、情熱にも似た何かが苦手な方もいらっしゃると思います。今作は僕の技術的な面と身体的な部分がかなり上手く融合した作品だと感じているので絶賛にも近いコメントをいただき嬉しい限りです。身体と技術、心。いわゆる心技体についてはまた別の機会にお話しすることがあるかもしれません。そうですね。首筋に弾丸。のめり込んでるのでしょうか。話者はもう死んでいるのかもしれませんね。
0あささん、コメントありがとうございます。今風な部分については、むしろ現代的な要素に話者が興味がないことの象徴として使わせていただきました。鬼滅の刃のティッシュ。実は普通のティッシュより40円高くて、逆に売れないという話を聞いたことがあったんですよ。それで、と使わせてもらいました。ちょっとヨレた感もありましたが上手く行ったのではないかと思います。この詩はかなりターゲットを絞った作品(読む層を意識した作品)だったので好みと言っていただけてとても嬉しいです。
1いすきさん、コメントありがとうございます。鋭いですね。この詩の話者は「生きる」ことにもう何の執着も持っていないのです。ほぼほぼ。1%の希望とありますがほとんど希望を持っていないからこそ、厄介な1%だとの意味合いで描いています。 あともう書く機会がないかもしれないので、ここに付記させていただきますが、ラスト 谷崎潤一郎を好んだ 祖父の血を引くだけの 亡霊 とすれば良かったなと少し悔いが残っています。それでは!
0非常にリズムの良い詩ですね。 何度か読んでみたのですがそれがどこから来るのか分かりませんでした。 言葉のチョイスと改行りの妙でしょうか。 内容としては大量のオブジェクトを使っているにも関わらず、 たった一つの生死を小馬鹿にしているようなドライな感覚が一貫して伝わってきて気持ちが良かったです。
0ロイヨさん、コメントありがとうございます。リズムはいつも意識していて、可読性とテンポのない詩、漢字カタカナひらがなの配置による見た目の美しさがない詩は今ひとつと思っている自分が一面いるのです。ですからリズムが良いとコメをいただけるのはとても嬉しいですね。ただ一つミスったかなと思ったのは「鬼滅の刃…」のところで「鬼滅の刃のティッシュペーパー」だけでも良かったかなと。惜しい感じがします。ドライ。ドライですね、確かに。この詩の話者は。僕自身思い出してゾッとするのは、ずっと昔殺人事件を起こした若夫婦が逮捕後「やることと言ったらセックスと食事だけだった」と言っていたことで、そこに行っちゃいかんよなあと常々思っています。ありがとうございました。
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