9月の終わりを意味する入道雲の残骸に、タバコの煙を吹きかけた。どちらともなく、青空と夜空の間に薄れて消えていった。
通りの向こうでは、茜色に染まった魔女たちが先を競って自らの長い影を切り取り、夜を短くする魔法をかけている。やがて乱立する高層マンションは次々に傾き、重力を失ったこの町は本格的な氷河期を迎えるのだ。
閉ざされた60階建ての1室で、色彩を持たない花は君だった。君は枯れることを恐れて、心の中に大事にしまっていたモノクロのフィルムを逆再生した。けれど、失われた彩りが蘇ることはなく、君の心もまた、煙のように薄れて消えていってしまった。
残されたフィルムは逆再生を続けていて、物語は丁度オープニングというフィナーレを迎えているところだ。
「僕らが払った代償は、あまりにも大きすぎたのではないか」
窓の外ではコマーシャルの音楽が賑やかに鳴り響き、街の至るところで、広告の女優が笑っていた。君は無表情を残して。
作品データ
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作成日時 2021-05-10
コメント日時 2021-05-26
#現代詩
#縦書き
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2024/11/21 23時24分53秒現在
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良いです。 少し勿体ないなと思ったのは、入りがちょっと弱いことですね。 良い詩なのにコメント0件!?とびっくりしたのですが、設定によっては詩の冒頭部分しか表示されてないこともあるので。 通りの向こうでは、茜色に染まった魔女たちが先を競って自らの長い影を切り取り、夜を短くする魔法をかけている。やがて乱立する高層マンションは次々に傾き、重力を失ったこの町は本格的な氷河期を迎えるのだ。 からの 閉ざされた60階建ての1室で、色彩を持たない花は君だった。 はとても良いと思いました。 けむり、氷河期、ながくなる夜、地上から遠くはなれた閉ざされた部屋、色もない無表情の君、世間の流れとは逆行して巻き取られ終わりを迎えるフィルム、喪ったものを取り戻せない僕ら。 読む人によって君と僕の関係性は異なるでしょうが、美しい世界観を練りながら、一気に部屋の中へとその世界を狭め、最後窓の外と君を比較する、そのカメラワークが美しいです。
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